これから家を建てようと考えている方にとって、今いちばん気になることの一つが「家の値段」ではないでしょうか。
「数年前よりずいぶん高くなった気がする」
「住宅ローンを払っていけるだろうか」
「子どもの教育費もあるし、家だけにお金をかけるわけにはいかない」
そんな不安を感じている方も多いと思います。

実際、現在の注文住宅市場では、土地代を除いた全国の平均建築費が3,488万円となり、過去10年間で最も高い水準になっています。
材料費や人件費など、さまざまなものが値上がりしているためです。さらに住宅ローンの金利についても、以前より気にする方が増えてきました。
では、家が高くなった今、私たちはどんな家づくりを考えればよいのでしょうか。
私たちが大切だと思っているのは、
「性能を落として安くする」のではなく、必要以上に家を大きくしないこと。
つまり、
小さくても、暮らしやすく、暖かく、地震に強く、長く住める家をつくる。
という考え方です。
住宅価格が上がると、多くの方が最初に考えるのは、
「どこを削ろう」
ということだと思います。
たとえば、
「断熱性能を少し下げようか」
「耐震性能は最低限でもいいかな」
「外壁や屋根も、安い材料にしようか」
そんな考えが浮かぶかもしれません。
もちろん、家づくりには予算があります。

何でも最高級にすればよいというわけではありません。
ただ、私たちは、家の性能を最初に削ることには慎重になってほしいと思っています。
なぜなら、断熱や耐震、耐久性というのは、家が完成したあとに簡単に変えられない部分だからです。
たとえばキッチンや洗面台なら、20年後に新しいものへ交換することもできます。
壁紙も張り替えることができます。
でも、家全体の断熱材を入れ直したり、柱や壁を補強して耐震性能を高めたりするのは、大がかりな工事になります。
だからこそ、
後から簡単に変えられない部分ほど、最初にしっかり考えておく。
これが長く住む家ではとても大切です。
そこで考えたいのが、
「家の大きさ」です。
日本では長い間、
「せっかく家を建てるなら広い方がいい」
という考え方がありました。
広いリビング。
大きな子ども部屋。
来客用の和室。
広い廊下。
大きな収納。
もちろん、それらが本当に必要なら問題ありません。
ただ、実際の暮らしをよく考えてみると、
「この部屋、本当に毎日使うかな?」
「この廊下は少し長すぎないかな?」
「子どもが家にいる期間は、あと何年くらいだろう?」
という場所も出てきます。
家は、1坪大きくなれば、その分だけ建築費も上がります。
そして大きな家ほど、建てるときのお金だけではありません。
冷暖房する場所も増えます。
外壁や屋根の面積も増えるため、将来のメンテナンス費用も大きくなりやすくなります。
掃除をする場所も増えます。
つまり、
家を大きくするということは、建てた後もずっとお金と手間がかかるということです。
ここで、とても大切なことがあります。
「コンパクトな家」と聞くと、
「狭い家」
「我慢する家」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、そうとは限りません。
大切なのは、家の面積ではなく、
その面積をどう使うかです。
たとえば、長い廊下をなくして、その分をリビングや収納に使う。

玄関、洗面、家事スペースを近くして、家の中を行ったり来たりする距離を短くする。
リビングとダイニングを上手につなげて、実際の面積以上に広く感じられるようにする。
窓の位置を工夫して、庭や空まで室内の一部のように感じられるようにする。
収納も「とにかく大きくする」のではなく、使う場所の近くにつくる。
こうした設計によって、25坪の家でも30坪以上の家より暮らしやすく感じることがあります。
反対に、40坪あっても廊下や使わない部屋が多ければ、
「意外と使いにくい」
ということもあります。
だから家づくりでは、
何坪あるかより、家族がどう動くか。
こちらの方がずっと大切です。
実際、最近の注文住宅では、建築費が上がる一方で、家の延床面積は小さくなる傾向があります。
つまり、多くの方が、
「とにかく広い家」
ではなく、
「必要な広さを上手に使う家」
へと考え方を変え始めているのです。
また、平屋を選ぶ方も増えています。

平屋には階段がありません。
洗濯や掃除などの家事も、同じ階で済ませやすくなります。
子どもが大きくなり、ご夫婦二人になったあとも暮らしやすいという良さがあります。
ただし、平屋であれば何でも良いわけではありません。
大切なのは、
家族に必要な広さを見極め、無駄な面積をつくらないことです。
私たちがおすすめしたいのは、
家をただ小さくして建築費を下げることではありません。
家を必要以上に大きくしないことで生まれた予算を、
暮らしを支える大切な部分に使うことです。
たとえば断熱性能。
冬の朝、布団から出るのがつらい家。

リビングは暖かいけれど、廊下へ出ると寒い家。
お風呂へ行くとき、脱衣所が冷え切っている家。
そんな家よりも、家の中の温度差が少ない方が、毎日の暮らしはずっと楽になります。
夏も同じです。
断熱性能が高ければ、外の暑さが家の中へ入りにくくなります。
エアコンも効きやすくなり、光熱費を抑えやすくなります。
そしてもう一つ、削ってほしくないのが耐震性能です。
家は、家族が毎日暮らす場所です。
もし大きな地震が起きたとき、
「家族の命を守れるか」
だけではなく、
「その地震のあとも家で暮らし続けられるか」
まで考えておくことが大切です。

地震のあと家が大きく壊れてしまえば、建て直しや大規模な修理が必要になることもあります。
住宅ローンを払いながら、もう一度住まいに大きなお金をかけるのは簡単なことではありません。
だからこそ、建てるときにしっかり考えておきたい部分なのです。
家づくりでは、最初の金額だけに目がいきがちです。
3,000万円の家。
3,300万円の家。
3,500万円の家。
数字が並ぶと、どうしても安い方に目がいきます。
でも、その家には30年、40年、もしかすると50年以上住みます。
その間には、
電気代。
冷暖房費。
外壁や屋根の修理。
設備の交換。
さまざまなお金がかかります。

つまり、本当に考えるべきなのは、
「建てるときにいくらか」だけではありません。
「住んでから、いくらかかる家なのか」
まで考える必要があります。
少し小さくても、断熱性能が高く、メンテナンスしやすく、丈夫な家。
そんな家の方が、長い目で見ると家計にやさしいこともあります。
家づくりを始めるとき、多くのご家族は子育て中です。
だから、
「子ども部屋を広くしたい」
「遊ぶスペースがほしい」
と考えるのは自然なことです。
でも、少し先の未来も考えてみてください。
10年、15年、20年後。
子どもたちは成長し、家を出ていくかもしれません。
そのあと、ご夫婦二人で30年以上暮らす可能性もあります。

そのとき、
使わない部屋ばかりの大きな家より、
必要な場所が近く、暖かく、掃除もしやすいコンパクトな家の方が暮らしやすいかもしれません。
家は「今」だけのためにつくるものではありません。
30年後の自分たちにも暮らしやすい家。
そこまで考えることが、本当の意味での家づくりだと思います。
注文住宅を建てた方への調査を見ると、家づくりで重視されたものの上位は、
1位が「間取り・プラン」
2位が「断熱性・気密性」
3位が「耐震・免震性」
でした。
これはとても興味深い結果です。
多くの方が求めているのは、
「とにかく大きな家」
ではありません。
暮らしやすくて、暖かくて、地震にも強い家。
なのです。
家の価格が上がっている今だからこそ、私たちは家づくりの考え方を少し変えてもよいのではないでしょうか。
住宅価格が上がった。
だから性能を落とす。
ではなく、
住宅価格が上がった。
だから必要以上に家を大きくしない。
そして、その分の予算を、
断熱。
耐震。
耐久性。
毎日の暮らしやすさ。
そんな、長く住むために大切な部分へ使う。
家づくりで本当に大切なのは、
家の大きさを人と比べることではありません。
家族が笑顔で過ごせること。
冬の朝も暖かいこと。
夏も無理なく涼しく暮らせること。
大きな地震が来ても家族を守ってくれること。
住宅ローンに追われすぎず、子どもの教育や家族旅行にもお金を使えること。
そして20年後、30年後にも、
「この家にして良かったね」
と思えることです。

そのための答えの一つが、
「必要以上に大きくせず、性能は落とさない家づくり」
だと私たちは考えています。
大きな家を建てることが、豊かな暮らしではありません。
家族にちょうどいい大きさの中に、本当に必要なものをきちんと入れる。
これからの時代は、そんな家づくりがますます大切になっていくのではないでしょうか。