住まいの耐震性能は、絶対に耐震等級3(許容応力度計算による)を確保しなくてはならないという思いを新たにした令和8年熊本地震ですが、この地震のニュースを見ていたら、「最大震度7」といった震度のほかに、「長周期地震動階級4を観測しました」という言葉を耳にしました。
「長周期地震動階級」とは?
「震度とは何が違うの?」
「戸建て住宅の自分たちにも関係するの?」
このように疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

長周期地震動階級とは、簡単にいえば、地震によって高層ビルがどれくらい大きく、長く揺れる可能性があるかを表す目安です。
震度とは見ている揺れの種類が少し違うため、別の数字として発表されています。
地震の揺れには、ガタガタと細かく揺れるものだけでなく、船に乗っているように、ゆっくり左右へ揺れるものもあります。
ここでいう「周期」とは、揺れが右へ行って左へ戻り、1往復するまでの時間です。1往復する時間が長い揺れを「長周期の揺れ」と呼びます。
大きな地震では、このゆっくりした揺れが発生し、震源から数百キロ離れた場所まで伝わることがあります。高層ビルでは、大きな揺れが長時間続く場合があります。
公園のブランコを思い浮かべてください。
ブランコが戻ってくるタイミングに合わせて背中を押すと、それほど強く押さなくても、揺れがだんだん大きくなります。

建物にも、それぞれ「揺れやすい速さ」があります。これを固有周期といいます。
地震の揺れの周期と建物の固有周期が近くなると、ブランコと同じように「共振」が起こり、建物の揺れが大きくなります。
一般的な戸建て住宅は、短い振り子のように比較的速く揺れます。一方、高層ビルは長い振り子のように、ゆっくり揺れやすい建物です。
そのため、高層ビルは長周期地震動と共振しやすく、特に上の階ほど大きく揺れることがあります。
震度は、地面の近くで感じる比較的短い周期の揺れを表すのに適した指標です。
しかし、地上の震度がそれほど大きくなくても、高層ビルの上の階では大きく揺れることがあります。
実際、2011年の東日本大震災では、大阪市の地上の震度は3でしたが、55階建ての高層ビルでエレベーターが停止し、閉じ込めが発生しました。さらに、内装材や防火扉なども破損しました。

震源から遠く、地上の震度も大きくないのに、高層階では被害が出たのです。
そこで気象庁は、震度だけでは伝えにくい高層ビルの揺れを知らせるため、2013年に「長周期地震動階級」を定めました。
この情報は、主におおむね14~15階建て以上の建物や、免震構造の建物などへの影響を考えるために使われています。
長周期地震動階級は、高層ビルの中で人がどのくらい動けるか、家具や事務機器がどのくらい動いたり倒れたりするかをもとに、4段階に分けられています。
室内にいるほとんどの人が揺れを感じ、ブラインドや照明などのつり下げ物が大きく揺れる可能性があります。
何かにつかまらないと歩きにくくなり、棚の食器や本が落ちることがあります。キャスター付きの家具やコピー機などが動く可能性もあります。
立っていることが難しくなります。固定していない家具が移動し、不安定なものは倒れることがあります。高層階では、すぐに身の安全を守る必要がある段階です。
立っていられず、はわないと動けないほどの揺れです。固定していない家具の多くが移動し、倒れるものもあります。
※気象庁からお借りしました。
ただし、この階級は「その地域にあるすべての高層ビルが同じように揺れる」という意味ではありません。
気象庁が発表する階級は、原則として地上や低層建物の1階にある地震計のデータから、「その場所に高層ビルがあった場合、どの程度揺れる可能性があるか」を推計したものです。
建物の高さや構造、いる階、地盤、揺れの続く時間などによって、実際の揺れ方は変わります。
大きな理由は、高層ビルが増え、そこで暮らしたり働いたりする人が増えたことです。
高層マンション、オフィスビル、病院、ホテルなどでは、長周期地震動によって家具が大きく移動したり、エレベーターが停止したりする危険があります。
また、震度だけを見て「この地域は震度3だから大丈夫」と思ってしまうと、高層階で起きている危険を見落とす可能性があります。
そこで、高層階の揺れ方を別の物差しで知らせ、住民や施設管理者が安全確認、避難誘導、エレベーターの管理などに役立てられるようにしました。

2023年2月からは、長周期地震動階級3以上が予想される場合にも、緊急地震速報の警報が発表される仕組みになっています。
これは、階級3以上になると、立っていることが難しくなり、家具の移動や転倒など、はっきりした危険が生じ始めるためです。
結論からいうと、長周期地震動階級は、一般的な平屋や2階建て住宅の被害を直接判断するための数字ではありません。
一般的な戸建て住宅は固有周期が短いため、長周期地震動階級が対象としている、およそ1.5秒から8秒程度のゆっくりした揺れとは共振しにくいからです。
戸建て住宅の被害を考えるときは、長周期地震動階級よりも、まず次のような点を見ることが大切です。
つまり、長周期地震動階級3だから、一般住宅が必ず大きく壊れるという意味ではありません。反対に、長周期地震動階級が低いから、住宅への被害が絶対にないという意味でもありません。
ただし、「戸建て住宅には全く関係がない」と考えるのも正しくありません。
長周期地震動階級が大きくなるような地震では、地上でも通常の地震の揺れが起きています。
気象庁が過去の観測データを調べたところ、長周期地震動階級3以上を観測した地点では、震度4以上も観測されていました。戸建て住宅でも、家具の転倒や物の落下、停電などには注意が必要です。

また、自宅が戸建てでも、地震が起きたときに家族が高層マンション、会社、学校、病院、ホテルなどにいるかもしれません。
高層でなくても、免震構造の建物は固有周期が長いため、長周期地震動の影響を受ける場合があります。
その意味では、家族全員が知っておきたい防災情報です。
高層階にいる場合は、窓ガラスや背の高い家具、キャスター付きの物から離れ、丈夫な机の下などで頭を守ります。

揺れている最中に無理に歩いたり、エレベーターへ向かったりしてはいけません。
戸建て住宅にいる場合も、「長周期地震動は高層ビルの話だから、うちには関係ない」と決めつけず、通常の緊急地震速報と同じように、まず身の安全を確保してください。
長周期地震動階級は、震度の代わりになる数字ではありません。
震度では分かりにくい、高層ビルのゆっくりした大きな揺れを伝えるための、もう一つの物差しです。
一般的な戸建て住宅の被害を直接示す数字ではありませんが、大きな地震が起きていることを知らせる重要な情報であり、高層建物にいる家族の安全を考えるうえでも無関係ではありません。
「震度は地面付近の揺れの目安」
「長周期地震動階級は、高層階のゆっくりした揺れの目安」
このように覚えておくと、地震のニュースを見たときにも理解しやすくなるでしょう。