夏が近づくと、必ずいただくご質問があります。
「エアコンは、少し大きめを選んでおいた方が安心ですよね?」
家電量販店に行くと、「14畳用」「20畳用」と書かれた札が並んでいます。迷ったら大きい方を選びたくなる。そのお気持ちは、とてもよく分かります。

ですが、断熱と気密をしっかりつくり込んだ住まいでは、この「大きめが安心」という考え方が、かえって夏の不快さを生んでしまうことがあります。
その理由をお話しします。
断熱材が少なく、隙間の多い家を思い浮かべてください。
窓のそば、玄関、床下、天井裏。あちこちから、外の熱気と湿気がどんどん入ってきます。冷やしても冷やしても、片っ端から逃げていく。バケツの底に穴が空いた状態で、水を注ぎ続けているようなものです。
こういう家では、エアコンがなかなか設定温度に届きません。だから「能力に余裕を持たせておこう」という選び方に、ちゃんと意味がありました。
問題は、この「常識」だけが、そのまま今の高性能住宅に持ち込まれていることです。
プラスホームがつくる住まいは、断熱性能を示すUA値が0.3〜0.35W/㎡K前後、気密性能を示すC値が0.3㎠/㎡前後です。
数字だけだと分かりにくいので、言い換えます。
UA値は「熱の逃げやすさ」。小さいほど、魔法瓶に近い家だと思ってください。

C値は「家じゅうの隙間を全部集めたときの面積」。C値0.3㎠/㎡の家なら、100㎡ほどの住まいで、隙間の合計は名刺1枚よりも小さいくらいです。
つまり、冷やした空気がほとんど逃げず、外の熱気も湿気もほとんど入ってこない。バケツの穴が、ほぼ塞がっている状態です。
こうなると、エアコンは短時間で設定温度に到達します。ここまでは、いいことばかりに聞こえます。
エアコンは、設定温度に達すると、心臓部である「圧縮機(コンプレッサー)」の運転を止めます。これを サーモオフ と呼びます。
このとき、風は出ています。ランプもついています。だから止まっていることに気づきにくい。
でも実際には、冷やす仕事も、湿気を取る仕事も、どちらも止まっています。
そもそもエアコンは、どうやって部屋の湿気を取っているのでしょうか。
エアコンの中には、キンキンに冷えた金属の部品(熱交換器)があります。そこに部屋の空気が触れると、空気の中の水蒸気が水滴に変わります。冬に、窓ガラスが曇って水滴がつくのと同じ現象です。その水がホースを通って、外へ捨てられています。
大事なのはここです。 エアコンは、冷やしている間しか湿気を取れません。
ぞうきんを絞る手が止まれば、水は出てこない。それと同じで、サーモオフの間、除湿はゼロになります。
ところが、家の中では湿気が出続けています。呼吸、汗、料理、お風呂、部屋干しの洗濯物。人が暮らしている限り、水蒸気は生まれ続けます。
その結果、何が起きるか。
温度計は26℃を指しているのに、なんとなく肌がベタつく。空気が重たく感じる。 「寒いのに、ジメジメする」 という、ちぐはぐな状態です。

湿度が高いと、同じ温度でも体は暑く感じます。だから設定温度をさらに下げる。すると余計に早くサーモオフする。悪循環です。
しかも高い湿度は、カビやダニにとって好都合な環境でもあります。
ここで、こう思われた方もいらっしゃるはずです。「除湿(ドライ)運転に切り替えればいいのでは?」
残念ながら、根本的な解決にはなりません。
一般的なドライ運転は、冷房を弱めに効かせて水滴を取る仕組みです。仕組み自体は冷房と同じですから、能力が過剰であれば、やはり早く設定温度に届いて止まってしまいます。
しかも設定によっては部屋を冷やしすぎてしまい、「寒いのに湿っぽい」がさらに強く出ることもあります。
ボタンの切り替えで何とかするより、はじめから家に合った一台を選ぶ。そちらの方が、ずっと確実です。
なぜ、能力が大きいエアコンほどこの問題が起きやすいのか。
大きなエアコンは、短距離走の選手です。全力で走って、一気に部屋を冷やして、すぐに息を切らして休む。休んでいる間に湿気が戻ってくる。また全力で走る。この繰り返しになります。
一方、その家に合った能力のエアコンは、マラソン選手です。ゆっくりとしたペースで、長く運転を続けます。

運転が続くということは、除湿も続くということ。だから、温度も湿度も、静かに一定に保たれます。
高性能な住まいほど必要な冷房能力は小さくなるので、「余裕を持たせたつもり」の一台が、実際には2倍も3倍も過剰になっていることが珍しくありません。
ここで、もう一つ知っておいていただきたいことがあります。
カタログに書かれている「何畳用」という表示は、かなり昔の断熱基準の住宅を前提にした目安がもとになっています。今の高性能住宅の実力を、まったく反映していません。
ですからプラスホームでは、エアコンを「畳数」で選びません。
その家の断熱性能。窓の大きさと向き。夏に入ってくる日射の量。間取りと空気の流れ。ご家族の人数。それらをもとに、夏と冬にどれだけの能力が必要なのかを計算したうえで、機種を決めます。
適切な能力を選ぶことには、快適さ以外の効き目もあります。
まず、本体価格です。能力の大きい機種ほど高くなりますから、無駄に大きな一台を買う必要がなくなります。
次に、電気代。過剰な運転と停止を繰り返すより、穏やかに動かし続ける方が効率よく働きます。

そして、機械の寿命。「全力で動いては止まる」を一日中繰り返すのは、エアコンにとっても負担です。
私たちが目指しているのは、「夏に涼しい家」ではありません。
暑さも湿気も、いつの間にか気にならなくなっている家 です。

そのためには、断熱・気密の数字だけでも足りませんし、機械の力だけでも足りません。その両方をつなげて考える必要があります。
これから家を建てる方も、今のお住まいのエアコンを買い替える方も、「何畳用にしようか」と考える前に、一度立ち止まっていただければと思います。
ご相談は、まだ何も決まっていない段階でも大丈夫です。