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  3. 未来から考える、後悔しない家づくり

20年後、30年後も「この家でよかった」と思うために

家づくりを始めると、間取りやキッチン、収納、外観など、目の前のことに気持ちが向きやすくなります。

「洗濯物をどこに干そう」
「キッチンから子どもの様子を見られるようにしたい」
「できるだけ収納を増やしたい」

どれも、毎日の暮らしに関わる大切なことです。

しかし、家は完成したときだけ快適であればよいものではありません。建ててから30年、50年と住み続けるものです。

子どもが成長した後や、自分たちが年齢を重ねたときにも、安心して無理なく暮らせる家であることが大切です。

そこで今回は、少し先の未来である「2050年」から逆算して、これからの家づくりで大切にしたいことを考えてみます。

今の最低基準で建てれば、ずっと安心なのでしょうか

2025年4月から、新しく建てる住宅には、国が定めた断熱性能を満たすことが義務づけられました。

断熱とは、外の暑さや寒さを家の中に伝わりにくくすることです。断熱性能の高い家は、冬に暖かさが逃げにくく、夏の暑さも入りにくくなります。

ただし、ここで気をつけたいのは、2025年の基準が「将来にわたって十分な性能」を表しているわけではないことです。

2030年には、現在よりも高いZEH水準の省エネ性能が、新築住宅の基本になる方向で進んでいます。今後も、住宅に求められる性能は少しずつ高くなっていくと考えられます。

つまり、2025年の最低基準だけで家を建てると、数年後には、新しく建てられる住宅と比べて性能の低い家になってしまう可能性があります。

家は数年で買い替えるものではありません。

これから建てるのであれば、今の最低基準を満たすだけでなく、20年後、30年後にも大きく見劣りしない性能を考えておくことが大切です。

「既存不適格」とは、すぐ住めなくなることではありません

建てた後に法律や基準が変わると、「建てた当時は法律に合っていたけれど、新しい基準には合っていない」という建物が出てきます。

こうした建物を「既存不適格建築物」と呼ぶことがあります。

この言葉を聞くと、

「違法な家になってしまうの?」
「住めなくなるの?」
「すぐに直さなければいけないの?」

と不安になるかもしれません。

しかし、法律が変わったからといって、それまで合法だった家が、すぐに違法になったり、住めなくなったりするわけではありません。

ただし、将来、大規模なリフォームや増築をするときには、新しい基準への対応を求められる場合があります。

また、家を売るときにも、耐震性能や断熱性能の高い家と比べて、評価に差が出る可能性があります。

だからこそ、「今の基準を満たしているから大丈夫」と考えるのではなく、少し先の未来まで見据えて家を建てることが大切なのです。

未来を考えた家づくりの三つのポイント

2050年から逆算して家づくりを考えるとき、大切にしたいのは次の三つです。

一つ目は、地震や暑さ、寒さから家族を守る「家の性能」。

二つ目は、将来の修理や維持費を抑える「家の耐久性」。

三つ目は、その土地の気候に合った「地域に合う家づくり」です。

どれも少し難しく聞こえるかもしれませんが、家族が安心して長く暮らすためには欠かせないことです。

まず大切なのは、家族を守る耐震性能

どれほどおしゃれで使いやすい家でも、大きな地震から家族を守れなければ、安心できる家とはいえません。

日本では、今後も大きな地震が起きる可能性があります。これから家を建てるなら、耐震性能はできるだけ高い水準を選びたいところです。

耐震性能には「耐震等級」という目安があり、等級1から等級3まであります。最も高いのが耐震等級3です。

耐震等級3は、消防署や警察署など、災害が起きた後も役割を果たす必要がある建物と同じ水準です。

ただし、「耐震等級3」と「耐震等級3相当」という表現は、必ずしも同じではありません。

「相当」という言葉だけで判断せず、どのような方法で安全性を確かめているのかを住宅会社に確認することが大切です。

おすすめしたいのは、「許容応力度計算」という方法で確認した耐震等級3です。

難しい言葉ですが、簡単にいえば、柱や梁、壁、基礎などが地震の力に耐えられるかを、一つずつ細かく計算する方法です。

断熱性能は、毎日の家事や健康にも関係します

断熱性能というと、「電気代を安くするためのもの」と思われるかもしれません。

もちろん、冷暖房費を抑えやすくなることは大きな利点です。しかし、断熱性能は、毎日の暮らしや家族の健康にも深く関係しています。

断熱性能の高い家では、部屋ごとの温度差が小さくなりやすくなります。

冬の朝に布団から出るつらさや、寒いキッチンに立つ負担、冷え切った脱衣室で服を脱ぐ不快感も減らせます。

夏も、外の暑さが室内に入りにくいため、エアコンが効きやすくなります。

特に、家事をする時間が長い人にとって、家の中の温度が安定していることは、とても大きな違いです。

また、リビングだけが暖かく、廊下やトイレ、脱衣室が冷え切っている家では、部屋を移動するたびに体が急な温度差にさらされます。

年齢を重ねてからの暮らしを考えても、家全体の温度差を小さくすることは大切です。

断熱材を厚くするだけでは十分ではありません

断熱性能を高めるには、断熱材をしっかり入れることが必要です。

しかし、断熱材を厚くするだけで、必ず暖かい家になるわけではありません。

冬に厚いコートを着ていても、前のファスナーが開いていれば、冷たい風が入ってきます。

家も同じです。壁や天井に断熱材が入っていても、すき間が多ければ、暖めた空気が外へ逃げ、冷たい空気が入ってきます。

そこで重要になるのが「気密」です。

気密とは、家にどれくらいすき間があるかということです。すき間が少ない家ほど、暖かい空気や涼しい空気が逃げにくくなります。

気密性能は「C値」という数字で表され、数字が小さいほど、すき間の少ない家です。

ただし、気密性能は図面だけでは分かりません。

実際に完成した家で気密測定を行い、きちんと性能を確かめることが大切です。

家は、建てた後にもお金がかかります

家づくりでは、どうしても「建てるときにいくらかかるか」に目が向きます。

もちろん、最初の建築費を予算内に収めることは大切です。

しかし、家は建てて終わりではありません。住み始めてからも、外壁や屋根、設備などの点検や修理が必要になります。

本当に家計への負担が少ない家を考えるなら、建築費だけでなく、建てた後の30年、50年にかかる維持費まで考える必要があります。

外壁や屋根は、選ぶ材料によって維持費が変わります

住宅の外壁によく使われているサイディングには、板と板のつなぎ目に、コーキングと呼ばれるゴムのような材料が使われています。

このコーキングは、雨水が建物の中へ入るのを防ぐ大切な部分ですが、紫外線や雨風の影響を受けて少しずつ傷んでいきます。

建築後10年前後になると点検が必要になり、状態によっては、古いコーキングを取り除いて新しく打ち替える工事が必要です。

また、サイディングの表面を雨や紫外線から守る塗装も、年月とともに劣化します。そのため、コーキングの工事とあわせて、外壁全体の塗り替えが必要になることがあります。

屋根についても同じです。

一般的な住宅でよく使われるカラーベストなどの屋根材は、10年前後から色落ちや表面の劣化が見られることがあります。

そのままにしておくと雨をはじく力が弱くなるため、状態によっては塗装が必要になります。

外壁や屋根の工事では、材料代や職人さんの費用だけでなく、建物の周りに足場を組む費用もかかります。

こうした工事が10年から15年程度の間隔で繰り返されると、長い目で見た維持費は決して小さくありません。

最初の価格ではなく、30年後の合計で考える

外壁材や屋根材には、さまざまな種類があります。

建築時の費用を抑えやすい材料もあれば、最初は少し費用がかかっても、長持ちしやすく、塗装や補修の回数を減らせる材料もあります。

見積書だけを見ると、少しでも安い材料を選びたくなるかもしれません。

しかし、建てるときに安くても、その後10年ごとに大きなメンテナンス費用がかかれば、30年、50年という期間では、かえって負担が大きくなることがあります。

反対に、建築時に少し費用をかけて耐久性の高い材料を選んでおけば、将来の塗り替えや補修の回数を少なくできる可能性があります。

大切なのは、「高い材料なら安心」「安い材料はよくない」と単純に考えることではありません。

その材料がどれくらい長持ちするのか、何年ごとにどのようなお手入れが必要なのか、将来の工事にどれくらいの費用がかかるのかを、建てる前に確認することです。

メンテナンスの少なさは、暮らしの安心につながります

外壁や屋根の工事には、お金以外の負担もあります。

業者を探し、見積もりを比べ、工事の日程を調整しなければなりません。工事中は足場や養生シートで家が囲まれ、窓を開けにくくなることもあります。

メンテナンスの回数を減らせれば、こうした暮らしのわずらわしさも少なくできます。

また、子どもの教育費がかかる時期や、住宅ローンの返済中に、突然大きな修理費が必要になるのは、家計にとって大きな負担です。

さらに、年齢を重ねて収入が少なくなった時期に、高額な外壁や屋根の工事が重なる可能性もあります。

建てるときに少し費用がかかったとしても、住み始めてからの30年、50年で維持費を抑えられれば、日々の暮らしや将来の家計の負担を軽くできます。

家の耐久性を考えることは、建物を長持ちさせるだけではありません。

家族が将来も安心して暮らすための、大切な資金計画でもあるのです。

その地域の暑さや寒さに合った家をつくる

北海道と沖縄では、気候が大きく違います。当然、暮らしやすい家の形も同じではありません。

雪の多い地域では、雪が落ちにくい屋根や、雪の重さに耐えられる構造が必要です。

台風が多い地域では、強い風や雨に耐えられる家が求められます。

岐阜を含む東海地方では、夏の蒸し暑さと冬の冷え込み、その両方への対策が必要です。

夏は、軒や庇、外付けの日よけなどを使い、強い日差しを室内に入れない工夫をします。

冬は、太陽の光と暖かさを室内へ取り込めるように、窓の位置や大きさを考えます。

自然の光や熱、風を上手に利用する考え方を「パッシブデザイン」と呼びます。

難しく聞こえますが、簡単にいえば、夏の暑さを避け、冬の暖かさを取り入れる家づくりです。

エアコンの台数より、空気の流れを考える

快適な家にするには、断熱や気密だけでなく、空調計画も欠かせません。

暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ動く性質があります。

この自然な動きを利用すれば、少ないエアコンでも家全体を快適にしやすくなります。

たとえば、冬は床下から暖かい空気を送る床下エアコン、夏は高い位置から冷たい空気を下ろす壁掛けエアコンなどがあります。

ただし、どの家にも同じ方法が合うわけではありません。

家の広さや間取り、断熱性能、日当たりによって、必要なエアコンの能力や設置場所は変わります。

大きなエアコンを付ければ安心なのではなく、その家に必要な冷暖房能力を計算し、空気が家の中をどのように動くのかまで考えることが大切です。

家は、未来の暮らしから逆算して考える

これから家を建てるなら、「今の基準に合っているか」だけでなく、30年後、50年後にも後悔しないかという視点を持つことが大切です。

そのために考えたいのが、次の三つです。

一つ目は、耐震・断熱・気密など、家族を守る「家の性能」。

二つ目は、将来の修理や維持費を少なくする「家の耐久性」。

三つ目は、その土地の暑さや寒さ、日差しに合った「地域に合う家づくり」です。

毎日を過ごす家だからこそ、見た目や流行だけでなく、本当に暮らしやすいか、長く安心して住めるか、将来の維持費を抑えられるかを大切にしたいものです。

建築時の価格だけを見ると、性能や耐久性の高い家は、少し高く感じるかもしれません。

しかし、家は建ててからの年月のほうが、はるかに長く続きます。

20年後、30年後に「この家を選んでよかった」と思えること。

年齢を重ねたときにも、大きな光熱費や修理費に悩まされず、安心して暮らし続けられること。

そんな未来から逆算して考えることが、これからの後悔しない家づくりにつながるのではないでしょうか。

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