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  3. 大手ハウスメーカーの「撤退」が意味すること 〜住まいづくりを検討中のあなたへ〜

この9月に起きた、2つの発表

2026年9月4日、大和ハウス工業が新築の戸建住宅事業から23道県で撤退すると発表しました。

理由は、資材費・建築費の高騰と人口減少により、戸建の着工戸数が長期的に減少していること。
2027年4月からは東京や大阪など都市圏を中心とした展開に絞り、成長が見込めるリフォームや賃貸管理といったストック事業を強化していく方針です。

撤退地域での注文住宅の営業は、今月末まで。

その6日後の9月10日には、積水化学工業が、セキスイハイム株式会社を首都圏(1都7県)のエリア統括会社と位置づけ、グループ各社を集約する組織再編を発表しました。

首都圏で販売棟数を大きく積み上げる「2030首都圏1.5倍戦略」を実行するため、経営資源をそこに集中させる、という意思表示です。

方向性は同じです。人が集まり、単価が取れる場所に、資源を寄せる。

経営判断としては、何も間違っていません

最初に申し上げておくと、私はこの判断を批判する気はまったくありません。

上場企業には株主に対する責任があります。
市場全体が縮んでいく中で、全国に営業所と展示場と施工体制を維持し続けるコストは莫大です。

だとすれば、勝てる場所に絞るのは当然の経営判断ですし、むしろ決断は早いほうがいい。経営者として、私はその判断の重さがよく分かります。

ただ、正しい経営判断であることと、住まい手にとって安心であることは、別の話です。

いま検討中の方に、何が起きるか

すでに打ち合わせが進んでいた方は、「このまま進めていいのだろうか」と迷われると思います。当然の感覚です。

アフターサービスは残ると説明されても、「新築からは手を引く」と決まっている会社と、これから30年の付き合いを始めることになる。その不安は、簡単には消えません。

そしてもうひとつ。一社が動いたことで、他社も続きやすくなりました。

これまで「ハウスメーカーは潰れないから安心」と言われてきましたが、これからは潰れる・潰れないではなく、「自分が住んでいる地域が、選ばれなくなる」という事態が起こり得る。そういう時代に入ったということです。

もっと重いのは、すでに建てた方かもしれません

新築が生まれなくなる地域で、アフターにどれだけの人員を割き続けられるのか。
会社としては強化すると言っていても、現場の人が減れば対応速度は落ちます。

そしてここには、あまり語られない技術的な事情があります。

軽量鉄骨系の大手住宅の多くは、「型式適合認定」という制度を使って建てられています。会社ごとの標準仕様をまとめて認定してもらう仕組みで、品質を安定させ、効率よく建てられる優れた制度です。

一方で、あとから他社が大きく手を入れることが非常に難しいという性質も持っています。

たとえば外張り断熱の改修。

外壁に重さが加わり、構造への負担が変わる工事は、認定の前提を崩してしまい、場合によっては違法建築になりかねません。

だから私たち地域の工務店は、そう簡単には手を出せないのです。

つまり、「建てた会社にしか直せない家」が存在します。

自社にしか直せない商品を世に出すのは、ストックビジネスとしては非常に強い戦略です。

けれど、その会社が地域から離れてしまったとき、残されたお客様は行き場を失ってしまう。
ここが、今回のニュースで私がいちばん気になっている点です。

地場工務店に、撤退する場所はありません

ここからが、私がお伝えしたい本題です。

地場工務店の存在理由は、大手ハウスメーカーとはまったく異なります。

大手は、全国のどこで建てるかを選べます。選べるからこそ、撤退という選択肢が生まれる。それは大きな会社の強みであり、当然の権利です。

私たちには、それがありません。

弊社は羽島で生まれ、羽島でお仕事をいただき、この地域で50年以上やってきました。この地域から撤退したら、会社そのものが無くなります。逃げ場がない、と言ってもいい。

だからこそ私たちにとっては、目の前のお客様と長く付き合い続けること自体が、経営そのものなのです。

良い家を建てて、住み続けていただいて、その方が次の方を紹介してくださる。それ以外に、この地域で50年続く方法はありませんでした。

引き渡しは終わりではなく、始まりです。

10年後の点検、20年後の設備交換、30年後の性能向上リフォーム。
車で15分の距離にいて、「近くまで来たので、ちょっと見ておきますね」が成り立つ関係。

それが地場工務店の役割だと思っています。

「継承できる形で建てる」ということ

もうひとつ、大事にしていることがあります。

私たちが建てるのは木造の在来工法で、地域の職人なら誰でも構造を理解できる建て方です。
特殊な認定に縛られていないので、将来、断熱改修も、間取りの変更も、耐震補強もできます。

そして正直に申し上げれば——万が一、将来この会社に何かあったとしても、他の工務店が引き継いで直せる家です。

自社にしか直せない家を建てて囲い込むより、誰でも手入れできる家を建てて、その上で「それでもうちに頼みたい」と思っていただく。

遠回りに見えますが、お客様の家を100年守るには、こちらのほうが確実だと考えています。

継承できる形で建てておくこと自体が、お客様を守ることだと思うのです。

とはいえ、「地元だから安心」でもありません

これも正直に書きます。
地元の工務店なら全部いい、という話ではまったくありません。
小さい会社ほど、経営体力や技術力の差は大きく出ます。
見極めていただく必要があります。

判断材料として、3つだけ挙げておきます。

  • 性能を数字で示せるか … 断熱性能(UA値)、気密性能(C値の実測)、耐震等級を、あなたの家について計算して出せるか。「うちは暖かいですよ」だけの会社は避けてください。
  • 引き渡し後の記録が残っているか … 図面、仕様書、点検履歴。10年後20年後に直すのは、この記録の有無で決まります。
  • 建てた後、他社でも触れる家か … 将来の選択肢を、施主から奪わない建て方をしているか。

この3つは、大手か地元かに関係なく使える物差しです。ぜひ、私たちにも遠慮なくぶつけてください。

最後に

今回のニュースは、不安をあおるための材料ではありません。ただ、住宅業界の潮目が確かに変わった、という合図ではあると思っています。

家は、建てて終わりではなく、住み続けるものです。

だとすれば選ぶべきは、商品やブランドだけでなく、「誰と、どこで、どれだけ長く付き合えるか」ではないでしょうか。

私たちは、この地域から動きません。動けません。
その覚悟だけは、どこにも負けないつもりです。

住まいづくりでご不安なことがあれば、まだ会社を決めていない段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
他社で進行中の計画についてのセカンドオピニオンも承ります。

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