家づくりを考えるとき、多くの方が気にされるのが「地震に強い家かどうか」です。
特に小さなお子さんがいるご家庭や、これから長く住み続ける家を建てる方にとって、地震への備えはとても大切です。

ただ、ここで知っておいていただきたいことがあります。
それは、地震対策は「一度大きな地震に耐えればよい」という話ではない、ということです。
近年の大きな地震では、最初の大きな揺れだけで終わらず、その後に何度も余震が続くことがあります。熊本地震のように、大きな揺れが短期間に複数回起きることもあります。
つまり、これからの住まいづくりでは、
「一度の地震に強い家」だけでなく、「繰り返しの揺れにも強い家」
という視点がとても大切になります。
弊社の住まいは、すべて許容応力度計算による耐震等級3を基本としています。
少し難しい言葉ですが、分かりやすく言えば、
「柱や梁、壁、基礎にどれくらいの力がかかるのかを、きちんと計算して確認したうえで、地震に強い家をつくる」
ということです。
耐震等級3は、住宅の耐震性能の中でも高い等級です。
これは、地震に対して家の骨組みをしっかり強くする考え方です。
たとえるなら、丈夫な骨格を持った体をつくるようなものです。

家づくりにおいて、この「耐震」は絶対に外せない基本です。
ただし、ここで大切なのは、耐震等級3の家であっても、大きな地震の揺れを受ければ、建物には少しずつ負担がかかるということです。
人間の体でも、一度強く押されるだけなら踏ん張れても、何度も何度も押されると疲れてきますよね。
木造住宅も同じです。
大きな揺れを受けるたびに、釘や金物、壁のまわりに少しずつ力がかかります。見た目には大きな被害がなくても、内部では少しずつ傷みが蓄積していく可能性があります。
そこで大切になるのが、制震という考え方です。
制震とは、地震の揺れを建物の中で吸収し、家にかかる負担を小さくする方法です。
耐震が「家を強くして踏ん張る方法」だとすれば、制震は「揺れの力をやわらげる方法」です。

たとえば、硬い床の上に食器を置いて揺らすと、ガタガタと大きく動きます。
でも、下に薄いクッションのようなものがあると、揺れの衝撃が少しやわらぎます。
制震は、このクッションのような役割を家に持たせる考え方です。
ただし、制震の目的は「家を強くすること」ではありません。
家の強さは、あくまで耐震設計で確保します。
制震の役割は、
地震の揺れ幅を小さくし、繰り返しの揺れによる建物の傷みを抑えること
です。
ここがとても重要です。
制震というと、「揺れを小さくする装置」と思われがちです。
もちろんそれも間違いではありません。
でも、木造住宅における制震の大きな意味は、むしろ
何度も続く揺れに対して、建物の傷みを増やしにくくすること
にあります。
大きな地震では、最初の揺れだけでなく、その後の余震も問題になります。
最初の地震で家の釘や金物、壁のまわりに負担がかかる。
そこへさらに2回目、3回目、4回目の揺れが来る。
すると、最初は踏ん張れていた家でも、だんだん揺れ幅が大きくなってしまうことがあります。

これは、木造住宅の接合部や壁まわりに少しずつ緩みや傷みが出てくるためです。
つまり、地震対策で本当に考えるべきなのは、
「最初の一回に耐えるか」だけではなく、「何度も揺らされたときに、どれだけ安定していられるか」
なのです。
この点で、弊社が注目しているのが、アイディールブレーン株式会社の制震テープです。
制震テープは、柱や梁などの木の骨組みと、構造用面材との間に貼る特殊なテープです。
「テープ」と聞くと、文房具のテープのようなものを想像されるかもしれませんが、役割はまったく違います。

このテープの中には、揺れの力を吸収する粘りのある素材が使われています。
地震で建物が揺れると、柱や梁と面材の間にわずかなズレが生じます。制震テープは、そのズレの部分で地震のエネルギーを受け止め、熱に変えて逃がす働きをします。
分かりやすく言えば、家全体に薄いクッション材を分散して入れるようなイメージです。
一般的な制震ダンパーは、壁の中の決まった場所に金物や装置を取り付けます。
一方、制震テープは、家の外周部などに広く分散して施工します。
つまり、限られた数か所で揺れを受け止めるのではなく、
家全体でやさしく揺れを受け止める
という考え方に近いのです。
制震テープの効果として特に分かりやすいのが、繰り返し地震を受けたときの実験結果です。
耐震等級3相当の木造住宅に、大きな地震を繰り返し与えた実験では、制震テープを使わない住宅では、1階の変形が1回目で28.3mm、4回目には64.2mmまで大きくなったとされています。
一方、制震テープを併用した住宅では、1回目が17.2mm、4回目でも23.4mmに抑えられたという結果があります。
数字だけ見ると少し難しく感じるかもしれませんが、意味はとても大きいです。
制震テープを使わない場合は、地震を繰り返すごとに揺れ幅が大きくなっていった。
それに対して、制震テープを使った場合は、何度揺らされても揺れ幅の増え方が小さかった。
つまり、制震テープの良さは、
大きな地震が何度も続いたときに、家の揺れ方が不安定になりにくいこと
にあります。
これは、家族が長く住み続ける家にとって、とても大切な安心材料です。
制震装置には、いろいろな種類があります。
代表的なのは、オイルダンパー、鋼材ダンパー、ゴム系や粘弾性体を使ったダンパーなどです。
これらの多くは、壁の中の決まった位置に装置を取り付けて、地震の力を吸収します。効果の高い製品も多く、決して悪いものではありません。
ただし、装置を取り付ける場所が限られるため、間取りや壁の配置によって、効果の出方をしっかり検討する必要があります。また、金物や可動部分を持つタイプでは、地震後の点検や、長期的なメンテナンスの確認も大切です。
一方、制震テープは、装置を数か所に取り付けるのではなく、柱や梁と面材の間に広く貼り込む方法です。

そのため、
家全体に分散して働く
目立つ装置がない
壁の中に納まり、暮らしの邪魔をしない
可動する金物がないため、日常的なメンテナンスを意識しにくい
という特徴があります。
もちろん、施工時には正しい貼り方と管理が必要です。
一度貼ったテープを簡単に貼り直すものではないため、施工精度はとても大切です。
しかし、新築時にきちんと計画して施工するのであれば、木造住宅の制震方法として非常に合理的な選択肢だと考えています。
地震対策には「免震」という方法もあります。
免震は、建物と地面の間に装置を入れて、地面の揺れを建物に伝わりにくくする方法です。
とても優れた技術ですが、一般的な木造住宅では、費用、敷地条件、メンテナンス、台風時の揺れなど、慎重に考えるべき点も多くあります。
それに対して、弊社が考える木造住宅の地震対策は、まず
許容応力度計算による耐震等級3
をしっかり確保すること。
その上で、さらに繰り返しの揺れに備える方法として、
制震テープを加える
という考え方です。
これは、家計を預かる方にとっても納得しやすい選択だと思います。
高価な装置で不安を消すのではなく、まず構造を確実にする。
そして、余震や繰り返しの揺れによる傷みを減らすために、必要な備えを加える。
この順番が大切です。
地震に強い家とは、単に「倒れない家」だけではありません。
もちろん、命を守ることが最優先です。
そのために耐震等級3はとても重要です。
でも、地震のあとも家族がその家で暮らし続けられるか。
大きな補修をせずに、安心して生活を再開できるか。
余震が続いても、不安を抱えすぎずに過ごせるか。
これからの住まいづくりでは、そこまで考えることが大切だと思います。

制震テープは、耐震等級3の代わりになるものではありません。
しかし、耐震等級3の住まいに加えることで、繰り返しの揺れに対する安心感を高める役割が期待できます。
弊社の住まいは、すべて許容応力度計算による耐震等級3を基本としています。
そのうえで制震テープを採用する意味は、家をさらに強く見せるためではありません。
本当の目的は、
繰り返しの地震に対して、揺れ幅を増やしにくくし、建物の傷みを抑えること
です。
一度の大地震に耐えるだけでなく、その後に続く余震にも備える。
家族が地震後も安心して暮らしを続けられるようにする。
そのための現実的で有効な方法の一つが、制震テープだと考えています。
地震対策は、ただ高価なものを選べばよいわけではありません。
大切なのは、基本となる耐震性能を確実にしたうえで、その家に合った備えを重ねることです。
これから家を建てる方には、ぜひ
「耐震等級3で命を守る」
そして
「制震で繰り返しの揺れに備える」
という考え方を知っていただきたいと思います。