「日射取得(日射を取り込むこと)」と「日射遮蔽(日射を遮ること)」について。
この2つは、住まいの快適さと省エネ性能を高めるためにとても大事なポイント。
特に「南向きの窓」がそのカギを握っています。
冬場に部屋をあたためるために、太陽の熱をうまく取り込むことを「日射取得(にっしゃしゅとく)」といいます。
例えば、南向きの窓がある部屋では、
12月でも昼間に太陽が差し込めば、
無暖房でも室温が26℃近くまで上がることがあります。
これは、太陽の位置が低くなり、
光が窓に垂直に近い角度で差し込むため、
熱エネルギーが効率よく取り込まれるからです。
夏は太陽の熱が入りすぎると部屋が暑くなりすぎてしまうため、光を遮ることが重要になります。
これを「日射遮蔽(にっしゃしゃへい)」といいます。
特に重要なのは「10時~14時」の時間帯。
この時間帯にいかに熱を遮れるかが、家の涼しさを大きく左右します。
太陽の光がどれくらい家に熱を伝えるかは、「角度」で決まります。
冬は太陽の角度が低いため、南の窓に対して直角に近く、熱を取り込みやすい(取得率が高い)。
夏は角度が高く、光が斜めから入るため、窓で反射されやすくなり、熱があまり入ってこない。
この「入射角によって日射熱取得率が変わる」ことは、建築や環境工学の基本的な考え方です。
窓の上に出っ張った屋根のような部分(庇)をつけて、夏の高い太陽をカットします。
理想は「窓の高さの1/3〜1/6」程度の長さ。
出しすぎると冬も遮ってしまうので、バランスが大切です。
夏:光をカット → 涼しく快適
冬:角度が低いので光が入ってくる → あたたかくなる
外に設置できるシェード(布製のスクリーン)やブラインドで、太陽の熱を直接カットします。
特に外側で遮るのが重要。
室内カーテンだと、光が一度室内に入り、熱に変わってから遮られるため効果が弱まります。
「夏は葉っぱで遮り、冬は落葉して光を入れる」というアイデアです。
ただし注意点も多く、
木の高さや位置が合わないと効果が出にくい
9月・10月・11月など、本当は遮りたい季節に葉が落ちてしまうこともある
真南に大きな木を植えると、圧迫感が強くなってしまう
という課題があります。
伝統的な日本の道具「すだれ」や「よしず」、あるいはゴーヤやアサガオでつくる「緑のカーテン」も立派な遮蔽手段です。
手軽に設置できる
見た目も涼しげ
取り外しができるので季節対応がしやすい
ただし植物を使う場合は、しっかり茂らせる手間と手入れが必要になります。
季節 | やること | 理由 |
---|---|---|
冬 | 光を取り入れる(日射取得) | 室内を暖めるため |
夏 | 光を遮る(日射遮蔽) | 室温の上昇を防ぐため |
家の快適さは、冷暖房機器だけではなく、
窓の位置や庇の長さ、周囲の植栽計画などでも大きく変わります。
日射の角度と性質を理解すれば、
省エネで健康的な暮らしができる家を設計できます。
太陽の角度や日射量を計算して、
家を「科学的に」設計するのがパッシブデザインという考え方。
住まいづくりでは、この考え方が想定に近い結果を導いてくれます。