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  3. 「60年保証」の正体とは?安心と誤解のはざまで考える家づくり

最近お客様から、こんな質問をいただきました。

「60年保証がある会社と契約したほうがいいですか?」

確かに、長い保証期間があると
安心感がありますよね。

でも、住宅業界に長く携わる者として
感じるのは、この“60年保証”という言葉には、
お客様の不安に寄り添うふりをしながら、
実は巧みに活用された“仕掛け”が
あるということです。


10年保証の本当の意味

まず基本から確認しましょう。

住宅の「10年保証」とは、法律(品確法)に
よって義務付けられたもので、
事業者は引き渡しから10年間、
構造と防水に関する瑕疵があれば必ず
無償で修繕しなければなりません。

これが住宅業界の最低限のルールです。

また「瑕疵担保履行法」によって、
保証が実行されるよう、業者は保険への
加入か供託金の預託が義務付けられています。

小規模な工務店は保険(住宅あんしん保証など)を
利用し、大手は供託金制度を使っています。

この10年保証は、昔は大企業だけの特権の
ように語られていましたが、
今は全ての住宅会社が守らなければならないルールです。


では「60年保証」の中身は?

60年保証とは、あくまで10年ごとの
延長型保証です。

10年目に点検をして有償工事をすれば
次の10年が保証される、という仕組み。

たとえば10年経過時には、
外壁のコーキング補修、
防水塗膜の再施工などが必要になります。

これらの修繕費はお客様の負担です。

そして修繕したことを条件に、
保証が20年、30年……と延長されていくわけです。

無料ではない保証、それが60年保証の実態です。


クローズド工法と相見積もりの壁

この60年保証を前面に出すのは、
主に大手ハウスメーカーです。

彼らの家づくりは、プレハブによる
「クローズド工法」。

これは構造・防水などの仕様が独自で、
他社によるメンテナンスが難しくなる
という特徴があります。

そのため、保証延長時やリフォーム時に
見積もりを取ろうとしても、
他社との比較が困難になりがちです。

実際に、「他社なら150万で済むはずの工事が、
専用工法のために400万円かかる」という事例もあります。

一方、地元の工務店などが採用している
「オープン工法」であれば、
構造が一般的なので他社でも施工や修理が
可能で、相見積もりがしやすくなります。


本当に大切なのは「保証」ではなく「品質」

最近の住宅は、品質がとても良くなっています。

きちんとした工事がされていれば、
30年は大きな問題なく住むことが
できるでしょう。

問題になるのは「結露」です。

実は、住宅の寿命を最も縮めるのが
この結露。

構造体を腐らせたり、
カビを発生させる原因になります。

ですが、60年保証の中には結露に
対する明確な保証はありません。

ここが大きな盲点です。


保険の落とし穴とチェックポイント

もう一点、注意したいのが
保険の対象範囲です。

たとえば、瑕疵担保保険は
基礎や屋根などの構造部分が対象ですが、
“地盤”は含まれません。

基礎の不具合の原因が
地盤にある場合、
別途「地盤保証」が必要になります。

このあたりも含めて、「おたくは
地盤についてどう考えていますか?」と
住宅会社に聞いてみると、
その会社の本当の考え方が
見えてくるかもしれません。


「60年保証」より大事なこと

「60年保証」という言葉に
踊らされるのではなく、
以下の点をしっかり確認してほしいのです:

  • 延長保証の免責内容と費用の有無
  • 採用されている工法がオープンかクローズドか
  • 結露対策の考え方
  • 地盤保証との組み合わせ

そして、施工の品質と、誠実に
情報開示してくれる住宅会社かどうか。

それが真の安心につながると、
私は思います。

家づくりは、保証より中身。

これから建てる方は、冷静に見極めてください。

 

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