今日は、家の快適性や省エネ性を図るための
重要な尺度「C値」について、
分かりやすくご紹介します。
実は、このC値という数値は、
建物の気密性能、つまり空気の
出入り具合を示しており、
家の断熱性能や換気計画にも
大きく関わっているんです。
ここでは、HEAT20が発表した
「2021年度版 設計ガイドブック」をもとに、
その根拠と適正な数値について解説していきます。
気密性能は、単に家の「隙間風」を
防ぐだけではありません。
主な目的は次の通りです。
暖冷房の効率向上と室内環境の改善
冬は暖房、夏は冷房を使用する際、家の外から冷たい空気や暖かい空気が不意に侵入すると、エネルギーの無駄遣いとなります。気密性能を高めることで、熱負荷を減らし、快適な室内環境を実現できます。
断熱材の性能維持と品質劣化の抑制
しっかりとした気密性があることで、断熱材の劣化を防ぎ、長期間にわたり性能を維持する効果があります。
結露防止
グラスウールやロックウールといった繊維系断熱材を使用している場合、気密性が低いと壁内部で結露が発生し、断熱材が傷む原因になります。
計画換気の効果向上
かつてのシックハウス問題を受けて、24時間換気が義務化されました。計画的に換気を行うためにも、家全体の気密性能は非常に重要です。
HEAT20は、家の実態に即した
基準を策定するために、
従来の「床面積」による評価から
「気積」(実際の容積)を考慮した
評価方法にシフトしました。
従来の方法では平面図的な面積で
評価していたため、吹き抜けや勾配天井など
現代の多様な住宅形態に十分対応できませんでした。
さらに、国際的には気密性能は
内外差圧50PaでのACH(1時間あたりの空気交換回数)で
評価されることが多く、
HEAT20もこの国際基準に準じた形で、
内外差圧9.8Paにおける通気量(Q9.8)と、
建物内部の気積(Vi)を用いた
「ACH9.8」という指標を導入しました。
このACH9.8の値が、実際に「風速」によって
住む人の不快感にどのように影響するかという視点から、
次のような考察がなされました。
快適性の目安は風速
人が不快に感じるのは、隙間風がもたらす空気の流れです。平均風速が約0.2m/sであれば、室内は快適とされるという研究結果があります。この結果から、ACH9.8値が0.5程度であれば快適性が確保されると判断されました。
C値との換算
ACH9.8の数値をC値に置き換えると、約0.9となることが分かりました。これを踏まえ、HEAT20は「C値が0.5~0.9の範囲内であれば、快適性と省エネ性の両面で十分な性能が得られる」という基準を示しています。
将来の劣化を考慮した補正
新築時は気密性能が最高ですが、実際には経年劣化(約2~3割の劣化)が見込まれます。これを考慮すると、初期段階ではC値をさらに厳しく設定することで、将来的な性能低下にも対応できるようになっています。
HEAT20の設計ガイドブックでは、
以下のような提案がなされています。
目標とすべきC値
新築時は、C値が0.7±0.2、すなわち実際の値としては0.5~0.9の範囲に収まることが望ましいとされています。
これは、冷暖房時のエネルギー効率だけでなく、室内の快適性(隙間風の発生を抑える)や断熱材の長期的な性能維持にも寄与するからです。
将来の性能低下への備え
新築時の最適な気密性能が、経年劣化によって変わる可能性を見越し、初期段階で厳しい基準を設定することで、長期間にわたり快適な住環境を維持するという戦略です。
また、気密性能やC値に関する詳しい解説は、
気密性に関する松尾先生の動画も
非常に分かりやすいので、
興味のある方はそちらもチェック
してみると良いでしょう。
家の快適性と省エネ性を実現するためには、
気密性能の確保が不可欠です。
HEAT20のガイドブックに基づくと、
C値が0.5~0.9の範囲内であれば、
適切な換気計画と断熱性能が維持され、
冬の寒気や夏の隙間風が抑えられるため、
住む人にとって快適な環境が整います。
新築時には厳しい基準を設け、
将来の劣化を見越すことが、
結果的に施主さんのメリットに
つながるのです。
ぜひ、家づくりやリフォームの際には、
このC値の考え方を参考に、
快適で省エネな住環境の実現を目指してください。