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  3. 住まいづくりのしあわせメソッド【その3】

私が考える正しい住まいづくりの進め方
「住まいづくりのしあわせメソッド」の第3回です。

空調・換気計画

これまで、「しあわせメソッドその1」では耐震性能、
「その2」では断熱性能についてお伝えしてきました。

今回は「その3」として、
住まいの空調・換気計画についてお話しします。

この話を聞かれることは多いかも知れませんが、
住まいが高気密・高断熱であるだけでは、
快適な環境を実現することはできません。

一部の超高断熱の住まいを除いては
冷暖房を担う空調設備
が必要です。

本記事では、その空調設備について詳しく掘り下げていきます。


高気密・高断熱と空調設備の関係

高気密・高断熱の高性能な住まいは、
エネルギー効率が高いと言われていますが、
高性能なだけで夏涼しく、冬暖かい環境を
維持することはできません。

冷暖房設備は必須です。

空調設備には電力、ガス、灯油などの
さまざまな動力がありますが、
選択の基準は「省エネ性」です。

1のエネルギーで3や4以上の
働きを得られるエアコンは理想的な選択肢です。

これはヒートポンプという熱交換方式を採用
していますが、その効果はカタログに掲載されている
「COP」や「APF」という数値で確認することができます。


空調設備の課題と対策

一方で、高性能住宅にもかかわらず、
エアコンの効果が十分に発揮されないケースがあります。

例えば、以下のような問題が発生する場合です。

  • 暖房時に部屋の温度むらが気になる
  • 冷房時に室内がベタベタする
  • 冷房の効きが悪い

これらの原因は、高気密・高断熱住宅の
特性を活かした空調計画がなされていない
ことにあります。

空調設備の適切な配置や、室内の空気の
流れを考慮した設計が必要不可欠です。

私たちは、高性能住宅を設計する際、
空気の流れも想定して間取りを計画します。

この空調計画の概要を建て主様と共有し、
その計画に沿ったエアコンの使い方を
理解していただくことで、快適な暮らしを
実現することができます。


パッシブな設計と省エネの実現

高い断熱等級の住まいでは、
効率的な空調計画が重要です。

例えば、断熱等級6の住まいでは、
人のいる時だけエアコンを使う
断熱等級4の住まいと同程度の電力で、
全館冷暖房が可能です。

これを実現するために、以下の空調計画を考慮します。

  • 太陽の動きに合わせた窓の配置
  • 日射の取得や遮蔽を行う設計
  • 空気の循環を考慮した通気経路の確保
  • 最小限の動力で行う換気方式

 可能な限り動力(電気やガス、灯油など)の
負担を少なくして、自然の空気の流れを活かした
換気・空調設計を行います。

その情報を建て主様と共有できなくては、
本当の省エネで快適な暮らしは提供できないという事を、
建築業者が分かっていなければならないと思います。

また、みなさんには、快適な住まいは
断熱性能を高めるだけで手に入るわけでは無い、
という事実も理解してほしいのです。

前回お伝えした、断熱性能基準を満たした住まいで、
太陽の動きに素直な設計と、パッシブな換気・空調計画を
行うことで、省エネで快適な全館冷暖房が実現できて、
ヒートショックによる心筋梗塞や
脳卒中の発生を格段に減らすことができます。

そして、家族全員が健康に暮らせることで、
医療費の負担が少なくなるだけでなく、
家族全員がいつも笑顔でいられる暮らしが手に入ります。


設備方式と長期的な視点

「全館空調」というワードを耳にすることがあります。

自然の空気の流れと無関係に、動力(電力)に
頼った空調計画を行い、大きな空調設備本体を
建物の懐に仕込み、空調の働きをすべて機械にゆだねる方法です。

これは空調の効果は期待できますが、
動力で動くものはすべて一定期間(15年から20年程度)
を経過すると、必ず交換時期を迎えます。

その時に掛かる費用は、確実に新築時以上です。

設備の規格が数年で変わることもよくあることで、
空調設備本体だけでなくダクト類もすべて
交換という事もあり得ます。

特に設備の交換には、新築時以上の費用が
かかるケースも珍しくありません。

住まいづくりは、高性能な住まいを
建てることがゴールではありません。

長い目で見て、快適性を維持しながら
メンテナンスコストを抑える計画が必須です。

そのためには、空調計画において維持費を
少なくすることができるパッシブな考え方を取り入れ、
建築業者と住まい手が情報を共有することが鍵となります。

高性能住宅を建てた後も、
長期的に維持費を抑えるために、
設備方式の選択も重要な要因となります。


住まいづくりは幸せづくり

これまで3回にわたり「しあわせメソッド」として、
住まいづくりの基本3本柱をお伝えしました。

  1. 耐震性能
  2. 断熱性能
  3. 空調・換気計画

これらの要素をバランスよく計画することで、
省エネで快適、そして家族が健康的に暮らせる
住まいが実現します。

ご自身やご家族の未来を考え、
後悔のない住まいづくりを進めていただければ幸いです。

 

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