近年、「高断熱・高気密住宅」が当たり前になりつつある中で、パッシブ換気という言葉を耳にする機会が増えてきました。
先日、北海道・札幌で、建築家の 山本亜耕 さんが設計された住宅を見学し、真冬の厳しい環境の中でパッシブ換気が実際に機能している様子を体感してきました。
そこで感じたことをもとに、今回はパッシブ換気の住まいについて、メリットだけでなく、注意すべき点も含めて整理してみたいと思います。
パッシブ換気とは、
機械の力に頼りすぎず、建物の性能と自然の原理を利用して空気を動かす換気の考え方です。
高断熱・高気密の住宅では、
室内外の温度差
空気の比重差(暖かい空気は軽く、冷たい空気は重い)
といった現象が自然に生まれます。
パッシブ換気は、この「自然に起こる力」を上手に設計に組み込み、給気・排気を成立させる仕組みです。

重要なのは、
「特別な機械が主役なのではなく、建物そのものが換気装置になる」
という点です。
北海道の住宅でまず驚いたのが、室内の静けさでした。
ファンの音がほとんどなく、空気が「動いている感じ」がしない。
それでいて、空気がこもる不快感もありません。

これは、機械換気に頼り切らず、
自然な圧力差で空気が流れているからこその特徴です。
パッシブ換気は、
「高性能な設備で制御する」という発想とは少し違います。
・モーター
・複雑な制御
・多数の可動部
に依存しないため、
長期的に見て故障リスクが低く、メンテナンス負担も抑えやすいというメリットがあります。
高断熱・高気密住宅では、
そもそも家自体が魔法瓶のような存在です。

その性能を前提に設計されたパッシブ換気は、「無理に空気を動かさない」ことで、住宅本来の性能を邪魔せずに活かしている印象を受けました。
パッシブ換気は、
断熱・気密性能が低い住宅では成立しません。
・隙間が多い
・断熱が弱い
こうした住宅では、
空気の流れが制御できず、計画換気にならないためです。
「換気方式だけ真似すればいい」という話ではない点は、最初にしっかり理解しておく必要があります。
パッシブ換気は「現象」を扱う換気です。
そのため、
・地域の気候
・敷地条件
・建物形状
を踏まえた設計が不可欠になります。
経験の浅い設計や、理屈だけの導入では、期待した効果が得られない可能性もあります。
北海道で特に学んだのが、この点です。
本州では「乾燥=加湿」が常識になりがちですが、寒冷地では、加湿のしすぎが
結露や凍結という別のリスクにつながります。

パッシブ換気の住まいでは、
温度・湿度を「感覚」ではなく、
数値で見ながら付き合う姿勢がとても大切になります。
今回の見学で強く感じたのは、
パッシブ換気は魔法の技術ではない、ということです。
✔ 高断熱・高気密
✔ 気候に合った設計
✔ 正しい暮らし方
これらが揃って、初めて力を発揮する仕組みです。
ただし、条件が整ったときの心地よさ、静けさ、自然さは、他ではなかなか得られない価値だと感じました。
パッシブ換気の住まいは、
「設備で頑張る家」ではなく、
「建物そのものが働く家」だと言えます。
すべての地域・すべての住宅に向いているわけではありません。
しかし、
地域の気候を理解し、無理のない形で性能を活かすという考え方は、これからの家づくりに欠かせない視点です。

パッシブ換気を知ることは、
「換気方式を選ぶこと」ではなく、
「住まいのあり方を考えること」なのかもしれません。