家づくりを検討している方の中には、
「ここを終の住処にしたい」
「ずっと住み続けられる家にしたい」
そう願う方が多くいます。
しかし、“あること” を知らずに家づくりを進めると、
老後に使いづらい家になり後悔することがあります。
その “あること” とは──
人は必ず年をとり、身体機能が低下していくという事実です。

若い今の感覚だけで間取りを決めてしまうと、
病気やケガをしたとき、また老後に、
「この家、使いにくい…」
と感じてしまう可能性があります。
そこで、私たちがいつもお世話になっている作業療法士・安全な家づくりアドバイザーで株式会社HAPROTの代表でもある満元 貴治(活動名:ヨシロー)さんの11年間作業療法士として臨床に携わり、現在は安心・安全な間取り設計を伝えている立場から提唱されている、「老後に後悔しない家づくりのポイント5つ」を紹介します。
間取りづくりで後回しにされがちなトイレ。
しかし、トイレは1日に何度も使う “絶対に我慢できない場所” であり、老後の生活の質を大きく左右します。
病院で住宅改修に携わっていた際、トイレが使いづらくて帰宅が困難になるケースが数多くあります。
特に重要なのが以下の2点です。
開き戸はバランスを崩しやすく、老後には危険。
また、後から引き戸に変更しようとしても「控え壁」が必要になり大掛かりな工事になります。
最初から引き戸一択です。

便器が入口と直角になると、方向転換が180度必要になります。
老後、膝の痛みやバランス低下があると、この180度が非常に負担になります。
便器と入口が平行=方向転換90度で済む設計 にしてください。
トイレの使いやすさは、
「自宅に帰れるかどうか」
の大きな判断基準にもなるほど重要です。
「ベランダで干す計画だから室内干しはいらない」
という方は要注意です。
洗濯物を持って階段を上る行為は、
年齢とともに最も危険な日常動作のひとつ になります。
実際に病院でも、
「2階のランドリールームが使えなくなり、1階に干すスペースをつくった」
という住宅改修は非常に多くありました。
また共働き世帯が増えた今、
室内干しスペースは天候に左右されず24時間使える “生活の質を上げる設備” でもあります。

できる限り
1階に室内干しスペースを設けることで、現在も老後も使いやすくなります。
収納を多くつくりたくなる気持ちはわかります。
しかし、椅子や台に上らないと届かない収納は絶対に避けてください。

椅子の高さ(約40cm)は、階段2段分の高さと同じ。
片足で体を持ち上げる動作は、実はとても負担が大きく、バランスを崩しやすい危険な動作です。
椅子から落下して手首を粉砕骨折したり、
腰骨を折って寝たきりになるケースは数多く起きています。
「立ったまま手が届く高さだけ」
これが収納の基本です。
1階に寝室をつくる間取りは老後に最適ですが、
そのためのスペースがもったいないと思う方も多いはず。
そこでおすすめなのが、
用途を変えられるユーティリティルーム を1部屋つくること。
この部屋は、
子どもの遊び部屋
勉強部屋
夫婦の趣味部屋
将来の寝室
など、ライフステージに合わせて柔軟に使えます。

体の状況が変化したときにも、
1階にベッドが置ける場所があるという安心感はとても大きい です。
玄関は、家の中で 転倒事故が多い場所の第2位。
靴の着脱は実は難しい動作で、
老後には特にバランスを崩しやすくなります。
上がり框に座って靴を履けばいいと思いがちですが、
かがむ動作が大きい
高さが低く立ち上がりにくい
など、老後には不向きです。
そこで、
玄関土間に「椅子を置けるスペース」を確保
しておくことが非常に重要です。
さらに、
上がり框には 手すり があると上り下りが安全に行えます。
将来、介護保険で手すりを設置できる制度もありますので、
その点も覚えておくと便利です。
老後に使いにくい家は、実は“今も使いにくい家”であることが多いです。
逆に、老後の暮らしを見据えた間取りは、
現役世代にとっても快適で安全 です。

後からのリフォームは費用も手間もかかります。
これから家づくりをする方はぜひ今回の5つのポイントを参考に、
今も将来も安心して暮らせる住まい を実現してください。