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  3. 耐力壁の選び方 ― 強くて長持ちする家づくりのために

家づくりで欠かせない「耐力壁」。

地震や台風から住まいを守る大事な
要素ですが、その選び方を間違えると、
思わぬコスト増や構造への負担を
招くこともあります。

今回は、耐力壁を選ぶ際に知っておきたいポイントを解説します。


強い耐力壁を決める2つの指標

耐力壁には「強さ」を表す2つの
指標があります。

1つは壁倍率
壁の強さそのもので耐震強度を示します。

もう1つは壁の長さ
同じ倍率でも、壁の長い方が
踏ん張りやすく、倒れにくいという
特徴があります。

例えば90cm幅の壁に筋交いを入れると1倍。

筋交いの厚みを増したり二重に
クロスさせたりすれば
最大5倍ほどに強化できます。

さらに、幅が2倍あれば、使う筋交いが
同じでも強さは2倍と評価されます。


「壁倍率×壁の長さ」で評価する壁量

耐力壁の強さは「壁倍率×壁の長さ」で評価されます。
これを壁量と呼びます。

例えば、1m幅の壁で倍率4倍なら4m。

2m幅の壁で倍率2倍でも同じ4mになります。

数値上は同じでも、実際の倒れにくさでは
長い壁の方が有利です。

これは、人が1本足より2本足の方が安定するのと同じ理屈です。


短い壁だけに頼るリスク

「倍率を上げて短い壁で済ませれば、
窓が広く取れて部屋も広々する」と
考える方もいます。

しかし、短い壁は引き抜き力に弱く、
強力な金物や基礎補強が必要になります。

結果としてコスト増になったり、
構造体に無理がかかる恐れがあるのです。

一方、長い壁は自然に力を分散でき、
無理なく家を支えます。

特に繰り返し地震を受けることを
考えると、無理をさせない構造が
長持ちにつながります。


2階の耐力壁と梁の関係

耐力壁は1階だけでなく2階にも設けます。

ここで注意したいのが梁への負担です。

2階に強い耐力壁を入れると、
横揺れの力が下向きに働き、
梁に大きな力がかかります。

そのため太い梁や補強が
必要になりますが、
梁が重くなると
クリープ現象(長期変形)の
リスクも出てきます。

これを避けるには、1階と2階で
耐力壁を揃えること。

そうすれば、地震力がスムーズに
基礎へ伝わり、家全体が無理なく強くなります。


見た目に惑わされない選び方

見学会で大きな金物や
太い梁を目にすると
「この家は丈夫だ」と感じがちです。

しかし本当に強い家は、
合理的に耐力壁が配置され、
2階と1階の柱が揃っている家です。

そうした家は強くて、安くて、
負担が少ない
という三拍子が揃います。

広い空間を求めたくなる
気持ちは自然ですが、
構造のバランスを考えた設計こそが、
家族を長く守る最良の選択です。


耐力壁を選ぶときは

耐力壁を選ぶときは、
「倍率」だけでなく「長さ」との
バランスを考えることが大切です。

高い倍率の短い壁は一見便利ですが、
無理を強いる構造になりやすく、
長期的には不利になることも。

設計士や工務店が提案するプランには、
こうした知識と経験が反映されています。

ぜひ、この理屈を理解した人に
構造計算を依頼することを忘れず、
ご自身と家族のために、
注意を払って家づくりを進めてください。

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