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  3. 見えないところで進む「夏型結露」に要注意

——壁と屋根のメカニズムと実践的な対策

「結露=冬の窓に水滴」というイメージ、
ありますよね。

ところが近年怖いのは、
夏に壁や屋根の“中”で起きる結露(夏型結露)です。

表面に現れにくく、気づいたときには
断熱材や構造体にダメージが及んでいることも。

今回は、壁・屋根の構成と夏型結露の仕組み
そして現場で効く対策をわかりやすく解説します。


なぜ今、夏型結露が問題になるのか

  • かつての家は**低気密(C値≒5程度)**で、湿気が出入りして“こもりにくい”一面がありました。

  • 現在は構造用パネルなどで**中途半端でも気密が上がる(C値≒2程度も珍しくない)**ため、湿気の逃げ道が不足し、壁体内結露リスクが上昇

  • 結露は放置すると、断熱材の性能低下/木材の腐朽・カビ/鉄部の錆につながり、耐震性・耐久性を損ねます。


壁・屋根の基本構成(内断熱の一般例)

外壁:外装材 → 通気層 → 透湿防水シート(例:タイベック)→ 面材(MDFなど)→ 断熱材(繊維系等)→ 胴縁(任意)→ 石膏ボード → 仕上げ
屋根:屋根材 →(通気)→ 野地板 →(必要に応じシート・面材)→ 断熱材 → 気密層 → 室内仕上げ

※面材には透湿性の差があり、選択次第で乾きやすさが変わります。


冬型結露と夏型結露の違い

冬型(室内 → 室外へ移動)

  • 室内が暖・湿、屋外が寒冷。

  • 壁内で外気温に近い冷面に達すると露点を超え、結露が発生。

  • 対策:室内側防湿気密シートで水蒸気を入れない/断熱強化で温度差緩和/透湿防水シート+通気層で屋外へ排湿。

夏型(室外 → 室内へ移動)

  • 屋外が高温多湿、室内は冷房で低温。

  • 冷えた室内側寄りの層で露点到達 → 見えないところで結露

  • 条件はシンプル:

    1. 十分な水蒸気(高湿度)

    2. 大きな温度差(外30℃台・室内20℃台など)


夏型結露が起こりやすい“落とし穴”

  • ポリエチレンの防湿・気密シート(水蒸気ほぼ通さない)を屋根・壁の室内側に張り、かつ冷房強めのとき、シート裏で結露が発生しやすい

  • セルロースファイバーなど調湿性の高い断熱材でも、恒常的な曇り・湿り長期劣化の火種

  • 片流れ屋根などで屋根は厚く断熱(20cm以上推奨)/壁は薄いと、壁側での夏型結露リスクが上がる。


実践的な対策(壁・屋根共通)

1) 可変透湿気密シートの採用

  • 冬は防湿、夏は透湿に“可変”するシートを室内側の気密ラインに。

  • 壁内の湿気を室内側へ還流させ、エアコンの除湿で処理できる流れをつくる。

  • 例:タイベックスマートウルト(Würth)のウートップ など。

  • コスト差は一棟で数万円程度の上振れで、“保険”として有効

2) 直冷を避けるディテール

  • 可変シートの**室内側に空気層(胴縁)**をつくる/石膏ボードを二重貼り薄い内側付加断熱で、表面温度の極端な低下を抑制

  • 屋根・壁ともに通気層の連続性を厳守(棟・軒・入隅・バルコニー取り合い要注意)。

3) 冷やしすぎない空調運用

  • 目標は26〜28℃で除湿優先(全館空調と好相性)。

  • 温度差を作りすぎない=露点到達を避ける、が基本。

4) 面材・材料の選択と検査

  • 透湿性の把握:面材・シートの透湿抵抗を仕様で確認。

  • 施工時は厚み・欠損・気密ライン写真・サーモ・ピン計測で可視化。

  • 既存住宅は小屋裏点検で夏期の曇り・湿りをチェック。


屋根で特に気をつけるポイント

  • 野地板が乾く設計棟換気+軒裏換気など通気計画を明確化。

  • 断熱厚のバランス:屋根だけ厚い/壁が薄い、のアンバランスを避ける。

  • シート選定:屋根断熱の気密層に可変透湿気密シートを基本とし、ポリエチレン単独は避けるのが安全側。


現場で使える超要約チェックリスト

  • 室内側は可変透湿気密シートを採用

  • 通気層は上下連続(壁・屋根とも)

  • 直冷防止:胴縁で空気層PB二重貼り等を検討

  • 屋根断熱=20cm以上を目安に、壁との厚みバランスを確認

  • 冷房は除湿優先で**26〜28℃**運用

  • 面材・シートの透湿性を仕様書で確認

  • 施工時の厚み・欠損・気密記録提出を受け取る

  • 既存住宅は小屋裏の夏季点検で曇り・湿りを確認


対策として

  • 冬型結露は「入れない+乾かす」で対策可能。

  • 夏型結露見えないところで起きやすいため、

    1. 可変透湿気密シート

    2. 直冷を避けるディテール

    3. 冷やしすぎない空調
      を“セット”で実装するのが実務的解です。

  • 高気密高断熱化が進む今こそ、壁と屋根の“乾き続ける設計”が住宅寿命を左右します。

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