住宅を長く快適に保つためには、
断熱や気密だけでなく「湿気対策」も重要です。

今回は、外壁通気工法の仕組みと、
その要となる「通気胴縁(どうぶち)」
について解説します。
木造住宅のほとんどは「外壁通気工法」を採用しています。
これは、室内から壁内に侵入した湿気を、
外壁と構造材の間にある通気層を
通して屋外に排出する仕組みです。

冬の室内は23℃・湿度50%とすると
絶対湿度は約8.7g/kg(DA)。
一方、外気が0℃・湿度70%なら
絶対湿度は約2.6g/kg(DA)です。
この差があるため、湿気は自然に
外へ移動しようとします。
理想は、室内の壁ボードの内側の
防湿シートで湿気の移動を止めて、
壁の中に入れないようにして、
壁体内結露を防ぎたいのですが、
実際には、防湿シートや断熱材で
完全に防ぐことはできません。
数パーセントの湿気は壁の中に侵入します。
そのわずかに壁内へ入り込む湿気を
通気層から排出する設計が不可欠なのです。
外壁を固定するための下地材を
「通気胴縁」と呼びます。
これが通気層の空気の流れを左右します。
大きく分けると以下の4種類があります。
縦胴縁
外壁材が横張りの場合に採用。
上下方向の通気は良好だが、窓下部分で空気が滞留しやすい。
横胴縁
外壁材が縦張りの場合に採用。
横方向の通気は確保できるが、上下の通気は2mごとの隙間(3cm程度)しかなく不十分。
横胴縁(スリット型)
胴縁そのものにスリットがあり、空気が流れるよう設計。
ただし、材料が特殊で採用例は少なく、通気性能も限定的。
縦横クロス胴縁
縦と横を組み合わせた工法。
上下・左右どちらの通気も確保でき、窓周りやコーナー部でも湿気が滞留しにくい。
採用している工務店は非常に少なく、マニアックな仕様。
日経クロステックの記事でも検証されていますが、
縦胴縁は窓下で湿気が滞留しやすい。
横胴縁は上下の通気がほとんど機能していない。
つまり、日本の住宅の99%以上は縦胴縁か横胴縁を採用しており、湿気排出が十分ではない可能性があるというのが実情です。
通気層の働きが完全でない以上、そもそも壁内に湿気を入れないことが大切です。

そのために防湿シートは欠かせません。
一部では「吹付けウレタン」や「セルロースファイバー」を防湿シートなしで施工するケースも見られますが、これは湿気を壁内に通してしまい、結露や劣化につながりやすい方法です。当社では必ず防湿シートの施工を推奨しています。
縦胴縁だけ → 窓下で湿気が滞留
横胴縁だけ → 上下の通気が不足
縦横クロス胴縁 → 上下・左右ともに通気可能で理想的
当社では、家を長持ちさせるために「縦横クロス胴縁」を採用しています。湿気の動きを妨げない構造にすることで、壁内結露を防ぎ、家の耐久性を高めることができます。
外壁通気工法は住宅を長寿命化する基本技術。
通気胴縁の選び方次第で湿気対策の効果が大きく変わる。
防湿シートと縦横クロス胴縁の組み合わせが、最も確実な対策。
長く快適に住める家をつくるには、見えない壁の中の湿気対策こそがカギになります。