この記事では「夏に湿度をコントロールして快適に過ごす方法」についてお伝えします。

新築の高性能住宅に住み始めた方々から、
こんな声を聞くことがあります。
「UA値も低くて断熱性は高いのに、夏は意外と暮らしにくい」
「涼しいけど、なんだか湿気っぽい…」
実はこの“ジメジメ感”こそ、夏の住まいの快適さを左右する最大の要因なんです。
最大の理由は「エアコンの働き方」にあります。

最近のエアコンは非常に省エネ。
設定温度に達すると自動で運転を抑え、
無駄な電力を使わないようにします。
でも、そこで止まってしまうのが問題です。
温度は下がったけど、湿気が残る
冷えてるのにジメジメして不快
これは「除湿」が不十分な状態です。
では、どうやって見極め、対策すれば良いのでしょうか?
普段よく目にする「湿度○%」は相対湿度で、
気温によって大きく変動します。
たとえば、同じ60%でも25℃と30℃では
含まれる水分量が全く違います。
そこで必要なのが「絶対湿度」の考え方。
空気1kg中に含まれる水分量(g)で表す
より正確に「湿気が多い/少ない」を判断できる
| 快適ライン | 絶対湿度(g/kg) |
|---|---|
| 夏:除湿が必要な目安 | 13g以上 |
| 冬:乾燥の目安 | 7g以下 |
※「みはりん坊」などの測定器で絶対湿度を確認できます。
※単位に注意:みはりん坊の(g/m3)を(g/kg)に変換するには0.83を掛けてください。
高性能住宅でも、こんな行動が室内の湿気を増やしてしまいます。

4人家族が1.5kg/人の洗濯物を室内干しすると…
含まれる水分:約60% → 合計3.6L/日の湿気が空気中へ
一方、エアコンの除湿能力:1時間で約1L
👉 湿気が飽和状態になるのは当然です。
▶ 対策:部屋干しは別室か、乾燥機を使用するか、外干しに切り替えましょう。または、エアコン選択時に部屋干し分の潜熱を考慮しましょう。
多くの住宅で採用されている3種換気は、
外気の湿気をそのまま取り込んでしまうのが欠点。
一方、1種換気(熱交換型)は、
温度と一緒に湿度も交換
外から入る水分量を最大50%カット
👉 たとえば30坪の家では、1時間あたり約710gの水蒸気を室内に入れずに済みます。
※注意点:1種換気は継続的な電気代の増加と定期的なメンテナンスが大前提です。
※3種換気でも外気の湿気をそのまま取り込まない設計方法が存在します。電気代をより節約しメンテナンスの負担が最も軽減できる方法です。
相対湿度を目標に自動運転
最大417g/hの除湿性能
電力消費はやや大きめ(約320W)

👉 エアコンだけで足りない除湿をしっかり補えます。
これはやや上級者向けですが、非常に効果的です。
エアコンは冷たい空気を出すだけでなく、「吸い込み口(リターン)」が重要
ここに熱をうまく入れてやると、エアコンが再び除湿を始めます
👉 試しにブラインドを少し開けて日射を入れてみると、エアコンの稼働が活発になることも。
いくらUA値が小さい高性能住宅でも、湿度を無視すると快適にはなりません
換気方式・室内干し・エアコンの使い方など、湿度対策は“総合力”
エアコンの「リターン」に熱を入れる設計は、
新築時に私が採用している方法です。
すでに住んでいる方も、
「熱を入れる実験」を一度やってみてください。
結果はきっと感じられるはずです。
✅ 湿度の目安は「絶対湿度」で見る(夏13g/kg以上は要注意)
✅ 室内干しは別空間 or 外干しで対策 または潜熱を考慮したエアコン選択
✅ 高性能な除湿器の導入も効果あり
✅ エアコンのリターンに熱を与えると除湿が進む
✅ 1種換気の選択ではフィルター交換など定期的なメンテナンスが必須
これからさらに長く、蒸し暑くなる日本の夏。
少しの工夫と知識で、
住まいの快適さは一段上へ進化します。

ぜひ今回の内容を参考に、
夏の湿度対策を始めてみてください!