阪神・淡路大震災以降、よく耳にするのが
「木造住宅は怖い」
「瓦屋根は地震に弱い」という言葉です。
しかし、こうした言葉には誤解が
含まれています。正しくは、
「耐震性能が十分でない古い建物に
瓦屋根が使われていた」というのが事実です。
瓦屋根は確かに重いですが、
建物がその重さに見合った耐震性能を
備えていれば問題はありません。
つまり、重さそのものが悪いのではなく、
それに耐えられる設計かどうかが重要なのです。
構造塾の佐藤先生が人間の体格に例えて
分かりやすく説明されています。
50kgの人と100kgの人が同時に地震を受けた時、
100kgの人の方がより大きな地震力を受けます。
しかし、足(=構造・耐震性能)が太く
しっかりしていれば、重くても倒れにくいのです。
建物も同じで、重い屋根でも、
それを支えるだけの設計がされていれば
問題ありません。
古い木造住宅には、瓦の下に土を敷いた
「土葺き」が多く用いられ、
より重くなっています。
加えて、土壁や漆喰なども
壁の重量を増やしていました。
また1981年以前の建物は、
新耐震基準が施行される前に建てられており、
耐震性能が不足している場合が多いのも事実です。
能登半島地震では、震度7の第1波で
多くの家屋が倒壊しました。
これは、1981年以前の旧耐震基準の建物が多く、
さらに過去の地震によるダメージが蓄積されて
いたためです。
熊本地震のように、第2波で倒壊する
ケースもありますが、能登では最初の一撃で
命を落とす危険が高まりました。
珠洲市周辺は過去にも震度6強を
記録する地震があり、見た目には無事でも
構造が弱っていた建物も多かったのです。
家の安全性を判断するには、
建築年代が一つの指標になります。
その上でおすすめしたいのが「微動探査」です。
これは、地盤や建物の揺れやすさを
実際の微小振動で測定する調査です。
地盤がしっかりしているか、建物が
どれくらい揺れるかなど、
数値で客観的に確認できます。
調査結果を見せることで、家族や親族を
説得する材料にもなります。
費用は10〜20万円程度です。
見極めが済んだら、必要な対策を講じましょう。
こうした対策は、専門家の協力が不可欠です。
調査・計算・補強計画すべてを
自己判断で行うのは危険です。
また、対策には時間とお金がかかりますが、
地震は予測できません。
元日のような誰もが油断している瞬間に
襲ってくる可能性があります。
命を守る住まいとは、単に倒壊しない
ことではなく、安心して長く暮らせること
でもあります。
寿命が延びる時代、安心できる家での
暮らしこそが、家族を守る最大の備えに
なるのではないでしょうか。
古い家が悪いのではありません。
無対策であることが危険なのです。
ぜひ、ご自身やご家族の住まいを
見直していただき、大切な命を守る行動を、
今こそ始めてください。