マイホームを検討している人にとって、
デザインや間取りと並んで大切なのが
「冬の暖かさ」です。
実はこの“暖かさ”は、単なる快適性の
問題ではなく「健康寿命」に直結する
重大テーマだと知っていますか?

世界保健機関(WHO)は、
住まいの最低室温として「18℃未満にならないこと」を強く推奨しています。
これは、日本の研究者──東京大学の前真之先生、
慶應義塾大学(現:東京工業大学)の伊香賀俊治先生、
近畿大学の岩前篤先生らの研究にも一致しており、
「断熱性能の高い住宅が人の健康を守る」ということが、
多くのデータから裏付けられています。
WHOが18℃という基準を示す背景には、
低室温が引き起こす健康リスクがあります。
気温が低いと、人体は熱を逃さないよう
血管を収縮させるため、血圧が急上昇します。
特に高齢者はこの反応が顕著で、
暖かい部屋から寒いトイレや脱衣室へ
移動した際、血圧が大きく上下し、
ヒートショックが起こりやすくなります。

日本では年間1万9000人以上が入浴中に
亡くなっていますが、これは交通事故死の約4倍。
背景には「家の寒さ」があると考えられています。
室温が低いと、気道が冷え、
喘息や肺の疾患の悪化リスクが高まります。

さらに、寒さは免疫力を低下させるため、
感染症にもかかりやすくなります。
これらの理由から、WHOは住宅の暖かさを
「公共衛生上の最低ライン」として18℃以上を推奨しているのです。
日本の住宅は「寒すぎる」と世界的に見られています。
前先生の研究では、一般的な日本の住宅は
冬の早朝に10〜13℃程度まで
室温が下がることが珍しくなく、
欧州の住宅と比較しても圧倒的に
寒いことが示されています。

また、前先生は
「暖房のつけっぱなし=もったいない」
という日本の常識が、
実は健康にも家計にも不利であることを
分かりやすく解説しています。
断熱性能を高めるほど、暖房が少ない
エネルギーで家全体を暖かく保てるため、
「健康・快適・省エネ」を同時に達成できるのです。
伊香賀先生の調査では、
断熱性能を上げると次のような効果が確認されています。
血圧が平均5〜10mmHg低下
冬の死亡リスクが下がる
冬季の呼吸器疾患が減少する
睡眠の質が向上する
さらに、健康改善によって医療費が減り、
社会全体で見ても経済効果が大きいことが
明らかになっています。

岩前先生の「断熱改修による健康改善」の
研究は特に有名で、断熱リフォームを
行った家庭では次の変化が見られました。
気分の落ち込みが軽減
鼻炎・せきなど呼吸器症状が減少
手足の冷えが減る
健康関連QOL(生活の質)が改善
つまり、「暖かい家」は大げさではなく家族の健康を守る住宅医療なのです。
WHOが18℃を推奨しても、
それを実現できるかどうかは
家の断熱性能にかかっています。
断熱が弱い家は、いくら暖房しても
熱が外へ逃げてしまい、
部屋ごとに温度差が生じやすくなります。
その結果、
リビングだけ暖かい
廊下・脱衣室・トイレが寒い
風呂場でヒヤッとする
といった危険な状態が生まれます。

反対に、UA値0.46〜0.40(HEAT20 G2レベル)の
断熱性能を確保すると、家全体が均一に暖まり、
「玄関や脱衣所も含めて18℃を下回らない住宅」が
実現しやすくなります。
最低でも等級6(UA=0.46以下)、
できれば等級7(0.26〜0.3台)を目指すと、
冬の「18℃基準」が達成しやすくなります。
玄関・廊下・脱衣室・トイレまで暖かいことが重要。
高断熱+計画的な暖房で実現できます。
前先生が繰り返し述べているように、
断熱が高い家は24時間暖房しても
光熱費はむしろ下がるケースが多いです。
「冬に18℃以上?」と思うかもしれません。
しかし、WHOはこれを“最低限”と位置づけています。
そして、前先生・伊香賀先生・岩前先生ら
日本の研究者の膨大なデータが、
それを裏付けています。
暖かい家は血圧を安定させる
呼吸器・循環器のリスクを減らす
睡眠や生活の質を高める
医療費を減らす
マイホームを建てるなら、
「デザイン」も大切ですが同時に
考えるべきテーマが家の温度・断熱性能です。

18℃を下回らない家は、家族の命を守り、
何十年後にも価値を生む
「最高の投資」と言えるでしょう。