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  3. すべての窓がトリプルガラスはベスト?——誤解をほどき、最適解を見つける

「すべての窓をトリプルガラスにすると良いと聞いた」

——あるお客様からの言葉に対しての
私の答えがこのブログを書くきっかけです。

ここでは、窓の基礎から選び方、
コスト最適化のコツまで、
実務の視点で整理します。


まずは基礎:シングル→ペア→トリプルの違い

  • シングルガラス:断熱が弱く結露しやすい

  • ペアガラス(複層):ガラス2枚+中間層(乾燥空気/ガス)で断熱性が向上

  • トリプルガラス:ガラス3枚+中間層×2でさらに断熱・遮音・防犯性が向上

トリプルの主なメリット

  1. 断熱性能が高くガラス面の結露が激減

  2. 遮音性アップ

  3. 防犯性も向上(破壊に時間がかかる)

主なデメリット

  • コスト増(仕様次第で+40〜100万円のレンジ)

  • 重量増(大開口は操作が重くなることも)


“全部トリプル”が正解とは限らない:地域と敷地で変わる

設計者の答えはいつも「地域区分と敷地条件次第」。

同じ地域でも日射条件(周囲建物・地形・植栽)で
最適解は変わります。

目安の考え方

  • 1・2地域(寒冷地)原則トリプル推奨
    例)外気−10℃/室内20℃=ΔT 30℃ → 窓の断熱強化メリット大

  • 5・6地域(温暖地)

    • 冬季に南面日射がしっかり得られる敷地 → 南はペアでも合理的

    • 冬季に日射が期待できない(隣棟影・地形等)→ トリプル有利

よく使う“現実的スキーム”

  • 南の大開口はペア(日射取得型)で暖房費を削減

  • 東・西・北の小窓はトリプルで熱損失を抑制
    コストの山(大開口)を抑え、小窓トリプルで性能底上げ。総額アップは+10万円程度に収まることも。


夜の冷え対策で“南ペア”の弱点は補える

日没後は窓から熱が逃げます。

雨戸・シャッター・厚手カーテン・
ハニカムスクリーン
の併用で体感と熱損失を補正

特にハニカムは独立気泡層を作り、
ガラス1枚分相当の効果が期待できます。


Low-Eの“置き場所”で窓は性格が変わる

  • 日射取得型:冬に太陽熱を取り込み、室内側の放熱を抑える(南面向き)

  • 日射遮蔽型:夏季の日射侵入をカット(西・東・眺望優先の北面など)

トリプルはメーカーにより膜の配置や
色味(クリア/グリーン/ブラウン等)があり、
目的(取得/遮蔽)に合わせて選定します。


“トリプルにすると壁内結露しやすい”説を解く

この説は前提条件の取り違えが多いです。

  • 壁に断熱がまったくない古家で、窓だけを高性能化すると温度分布が変わり、理屈の上では別部位で結露が起きうる…という話が独り歩き

  • ただしそのような家は気流止めが無いなど他要因も大きく、壁内の温湿度条件が安定しない一方、外気に近い温度場で乾きやすいという側面も。

  • 現代の新築・改修で適切な断熱・通気・気密・透湿設計を行えば、“トリプル=壁内結露”には直結しません

ポイントは“乾く設計”

壁は 外壁 → 通気層 → 面材(透湿) → 断熱材 → 室内側気密層 → 石膏ボード が基本。

気密で侵入を抑え、透湿で抜け道を確保する
入れず・溜めず・乾かす」設計が肝です。


直感でわかるU値/R値の話(グラスウール換算)

  • U値(W/㎡K)は小さいほど断熱性↑

  • R値=1/U(熱抵抗)。大きいほど断熱性↑

代表例(概算イメージ)

  • 樹脂枠トリプル:U≈1.0 → R=1.0

  • 樹脂枠ペア:U≈1.7 → R≈0.59

  • アルミ樹脂複合ペア:U≈2.4 → R≈0.42

  • アルミ枠ペア:U≈4.6 → R≈0.22

グラスウール16K・t=100mmのRは約2.6
これで換算すると——

  • 樹脂トリプル約38.4mm分

  • 樹脂ペア約22.6mm分

  • アルミペア約8.4mm分

「窓はどれだけ頑張っても壁断熱の一部ほどの厚み相当」という直観が掴めるはず。だからこそ窓“だけ”で語らず“外皮全体”で最適化するのが正解です。


最適解の見つけ方

  1. 地域区分 × 敷地の日射条件で、南面は取得優先遮蔽優先かを決める

  2. 南の大開口はペア(取得型)+夜間対策小窓はトリプル費用対効果を稼ぐ

  3. Low-Eの配置を目的に合わせて選ぶ(取得型/遮蔽型)

  4. **壁は「気密+透湿+通気」で“乾く設計”**にする(面材の透湿も重要)

  5. 窓単体でなく外皮全体(壁・屋根・基礎・換気)でバランス設計


クイック判断表(温暖地5・6地域の例)

条件南面の推奨東西北の推奨夜間対策備考
南面に十分な冬季日射ペア(取得型Low-E)トリプル(遮蔽/標準)ハニカム/雨戸コスト最小で暖房費を抑える
南面が隣棟影で日射乏しいトリプル(取得型)トリプルカーテン等逃げ熱を極小化
西日が強い南:ペア(取得型)西は遮蔽型を強める外付け遮蔽+夜間対策夏季のピーク抑制
予算を抑えつつ性能確保南大開口はペア小窓をトリプルハニカムトータル+10万円程度UPに留めやすい

最後に

「トリプル=壁内結露」は、
設計の前提を外した一般論が独り歩きしたもの。

実際は、外皮全体の設計
(気密・透湿・通気・日射計画)と窓の使い分け
で、
快適・省エネ・結露抑制・コストのバランスは
十分に取れます。

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