地震に強い家を語るうえで
欠かせないのが耐力面材です。

聞き慣れない方も多いと思いますので、
基本的なことから実践的な選び方、
コストと性能のバランスまで、
できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思います。
在来工法の木造住宅は、柱・梁・土台で
“サイコロ状”の骨組みをつくり、
筋交い(すじかい)や火打ちで
斜め方向に踏ん張らせます。

1995年の阪神淡路大震災では、
ツーバイフォー(枠組壁工法)の
“面で受け止める”構造が強みを見せました。
以降、在来工法でも面材を貼って
面で耐える手法が一般化。
いまや在来×面材のハイブリッドがスタンダードです。
構造用合板(いわゆるコンパネ)
OSB(木片を樹脂で固めた板)
ダイライト/あんしん/タイガーEXボード/ハイベストウッド/モイス
(※各名称はメーカー商標)
壁倍率:一枚貼りで何倍の耐力が出るか(基準=1倍)
透湿性:湿気を通し、壁内を乾きやすく保てるか
防火性能:外皮での延焼をどれだけ抑えられるか

地震に強い“だけ”では不十分。結露リスク(耐久性)と火災安全まで含めて総合評価が必要です。
構造用合板:標準施工で約2.5倍。CN釘・高密度留めで3.7倍も可
OSB:約2.5倍
ダイライト:2.5〜3.3倍
あんしん:2.5〜3.2倍
タイガーEXボード:2.3〜2.7倍(石膏系)
ハイベストウッド:2.5倍〜施工で〜4倍
モイス:2〜4倍
参考:筋交い(在来の斜材)は「厚15mm×幅90mm=1倍」が基準。厚みを増すと1.5倍、2倍…と上げられます。
壁は外壁→通気層→面材→断熱材→気密層→石膏ボードが基本構成。
室内側の気密で結露を“理論上”抑えても、
現場ばらつきや生活で水分は侵入し得るため、
面材で湿気が抜ける設計が安心。

乾いた断熱材は性能が高く長持ちします。
構造用合板/OSB:樹脂層が多く透湿性は低め
ダイライト/あんしん/タイガーEX/ハイベスト/モイス:透湿性が高いものが多い
ハイベストウッド:木繊維系で燃える側に分類。ただし外壁を不燃系サイディングにすればトータルではOK。コスパと透湿性のバランス良好。
タイガーEXボード:石膏系で不燃かつ透湿性良好。壁倍率が控えめなので筋交いとのハイブリッドで補う設計が有効。
あんしん/モイス:防火・透湿とも優秀だが重くて施工負担↑=コスト↑。
外壁が不燃サイディング系やガルバリウム鋼板
→ ハイベストウッド:透湿◎/壁倍率◎/コスパ◎(仕上げで防火を担保)
外壁が杉板やEPS(付加断熱)等=外皮防火が弱い
→ タイガーEXボード:不燃+透湿で安心。筋交い追加で耐力を補う設計が現実的
超ハイレベル耐久・防火を優先
→ あんしん/モイス:性能は出るが重量・手間・費用の増加を織り込む
高倍率=強い壁ほど大きな力を受け持つため、

ホールダウン・アンカーボルトの大容量化
複雑な基礎配筋
施工難度↑&コスト↑
になりやすい。家全体の“流れ(力の伝達)”とバランスが重要です。
→ 面材×筋交い×配置(1・2階通り芯を揃える)で無理なく強いがベスト。
| 外壁仕上げ/目的 | 推し構成(例) | ねらい | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 不燃サイディング系ガルバリウム鋼板 | ハイベストウッド単独 or +必要部筋交い | 透湿◎、耐力◎、価格◎ | 外壁で防火担保 |
| 木板・EPS付加断熱など防火弱 | タイガーEXボード+筋交い | 不燃+透湿で壁体健全性◎ | 壁倍率は筋交いで補完 |
| 最高水準の防火・透湿 | あんしん/モイス(必要部筋交い) | 総合性能◎ | 重量・手間・費用↑ |
| 合板を使う場合 | 構造用合板(CN釘高密度) | 高耐力が取りやすい | 透湿性△、結露設計に配慮 |
※最終判断は地域の防火規制・準耐火/省令準耐火、耐力壁配置・偏心、基礎設計まで一体で。
外壁仕上げは不燃か?(面材×仕上げで防火を満たせるか)
透湿計画は妥当か?(通気層、面材透湿、室内側気密の整合)
必要耐力は面材のみか、筋交いハイブリッドかで効率よく満たすか
1・2階の耐力壁通りは揃っているか(力を素直に基礎へ)
金物・基礎が過大になっていないか(高倍率偏重で無理が出てないか)
施工性と重量は現場に適するか(工期・コスト・品質確保)
結露計算/防火仕様は図面で根拠化されているか
面材は壁倍率・透湿性・防火性能の
“三点セット”で評価し、
外壁仕様と筋交いとの組み合わせで
無理なく強い構造を作るのがコツ。
高倍率一点張りではなく、
力の流れが素直で、乾きやすく、
燃え広がりにくい—そんな“総合最適”を目指しましょう。

地震に強く・壁内結露が起きにくく・火災にも備えた住まいに近づきます。
設計者・工務店と外皮仕上げ/耐力壁配置/防火・結露の根拠までセットで相談するのが正解です。