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  3. 地震に強い家づくりのカギ:面材(めんざい)を正しく選ぶ

地震に強い家を語るうえで
欠かせないのが耐力面材です。

聞き慣れない方も多いと思いますので、
基本的なことから実践的な選び方、
コストと性能のバランスまで、
できるだけ分かりやすくお伝えしたいと思います。


面材とは?—「点」ではなく「面」で耐える発想

在来工法の木造住宅は、柱・梁・土台で
“サイコロ状”の骨組みをつくり、
筋交い(すじかい)や火打ち
斜め方向に踏ん張らせます。

1995年の阪神淡路大震災では、
ツーバイフォー(枠組壁工法)の
“面で受け止める”構造が強みを見せました。

以降、在来工法でも面材を貼って
面で耐える
手法が一般化。

いまや在来×面材のハイブリッドがスタンダードです。


面材の代表格

  • 構造用合板(いわゆるコンパネ)

  • OSB(木片を樹脂で固めた板)

  • ダイライトあんしんタイガーEXボードハイベストウッドモイス
    (※各名称はメーカー商標)


面材を評価する3つの軸

  1. 壁倍率:一枚貼りで何倍の耐力が出るか(基準=1倍)

  2. 透湿性:湿気を通し、壁内を乾きやすく保てるか

  3. 防火性能:外皮での延焼をどれだけ抑えられるか

地震に強い“だけ”では不十分。結露リスク(耐久性)と火災安全まで含めて総合評価が必要です。


壁倍率のめやす(概念整理)

  • 構造用合板:標準施工で約2.5倍。CN釘・高密度留めで3.7倍も可

  • OSB約2.5倍

  • ダイライト2.5〜3.3倍

  • あんしん2.5〜3.2倍

  • タイガーEXボード2.3〜2.7倍(石膏系)

  • ハイベストウッド2.5倍〜施工で〜4倍

  • モイス2〜4倍

参考:筋交い(在来の斜材)は「厚15mm×幅90mm=1倍」が基準。厚みを増すと1.5倍、2倍…と上げられます。


透湿性が大事な理由

壁は外壁→通気層→面材→断熱材→気密層→石膏ボードが基本構成。

室内側の気密で結露を“理論上”抑えても、
現場ばらつきや生活で水分は侵入し得るため、
面材で湿気が抜ける設計が安心。

乾いた断熱材は性能が高く長持ちします。

  • 構造用合板/OSB:樹脂層が多く透湿性は低め

  • ダイライト/あんしん/タイガーEX/ハイベスト/モイス透湿性が高いものが多い


防火性能は“仕上げとの組み合わせ”で考える

  • ハイベストウッド:木繊維系で燃える側に分類。ただし外壁を不燃系サイディングにすればトータルではOK。コスパと透湿性のバランス良好。

  • タイガーEXボード石膏系で不燃かつ透湿性良好壁倍率が控えめなので筋交いとのハイブリッドで補う設計が有効。

  • あんしん/モイス防火・透湿とも優秀だが重くて施工負担↑=コスト↑


“最適解”は目的と外壁仕様で変わる

  • 外壁が不燃サイディング系やガルバリウム鋼板
     → ハイベストウッド:透湿◎/壁倍率◎/コスパ◎(仕上げで防火を担保)

  • 外壁が杉板やEPS(付加断熱)等=外皮防火が弱い
     → タイガーEXボード不燃+透湿で安心。筋交い追加で耐力を補う設計が現実的

  • 超ハイレベル耐久・防火を優先
     → あんしん/モイス:性能は出るが重量・手間・費用の増加を織り込む


「壁倍率だけ追う」は落とし穴

高倍率=強い壁ほど大きな力を受け持つため、

  • ホールダウン・アンカーボルトの大容量化

  • 複雑な基礎配筋

  • 施工難度↑&コスト↑
    になりやすい。家全体の“流れ(力の伝達)”とバランスが重要です。
    面材×筋交い×配置(1・2階通り芯を揃える)で無理なく強いがベスト。


実務で役立つ“選び方の早見表”

外壁仕上げ/目的推し構成(例)ねらい留意点
不燃サイディング系ガルバリウム鋼板ハイベストウッド単独 or +必要部筋交い透湿◎、耐力◎、価格◎外壁で防火担保
木板・EPS付加断熱など防火弱タイガーEXボード+筋交い不燃+透湿で壁体健全性◎壁倍率は筋交いで補完
最高水準の防火・透湿あんしん/モイス(必要部筋交い)総合性能◎重量・手間・費用↑
合板を使う場合構造用合板(CN釘高密度)高耐力が取りやすい透湿性△、結露設計に配慮

※最終判断は地域の防火規制・準耐火/省令準耐火耐力壁配置・偏心基礎設計まで一体で。


面材選定のチェックリスト

  • 外壁仕上げは不燃か?(面材×仕上げで防火を満たせるか)

  • 透湿計画は妥当か?(通気層、面材透湿、室内側気密の整合)

  • 必要耐力は面材のみか、筋交いハイブリッドかで効率よく満たすか

  • 1・2階の耐力壁通りは揃っているか(力を素直に基礎へ

  • 金物・基礎が過大になっていないか(高倍率偏重で無理が出てないか)

  • 施工性と重量は現場に適するか(工期・コスト・品質確保)

  • 結露計算/防火仕様は図面で根拠化されているか


面材の最適は

面材は壁倍率・透湿性・防火性能
“三点セット”で評価し、
外壁仕様筋交いとの組み合わせ
無理なく強い構造を作るのがコツ。

高倍率一点張りではなく、
力の流れが素直で、乾きやすく、
燃え広がりにくい
—そんな“総合最適”を目指しましょう。

地震に強く・壁内結露が起きにくく・火災にも備えた住まいに近づきます。

設計者・工務店と外皮仕上げ/耐力壁配置/防火・結露の根拠までセットで相談するのが正解です。

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