——壁と屋根のメカニズムと実践的な対策
「結露=冬の窓に水滴」というイメージ、
ありますよね。

ところが近年怖いのは、
夏に壁や屋根の“中”で起きる結露(夏型結露)です。
表面に現れにくく、気づいたときには
断熱材や構造体にダメージが及んでいることも。
今回は、壁・屋根の構成と夏型結露の仕組み、
そして現場で効く対策をわかりやすく解説します。
かつての家は**低気密(C値≒5程度)**で、湿気が出入りして“こもりにくい”一面がありました。
現在は構造用パネルなどで**中途半端でも気密が上がる(C値≒2程度も珍しくない)**ため、湿気の逃げ道が不足し、壁体内結露リスクが上昇。
結露は放置すると、断熱材の性能低下/木材の腐朽・カビ/鉄部の錆につながり、耐震性・耐久性を損ねます。

外壁:外装材 → 通気層 → 透湿防水シート(例:タイベック)→ 面材(MDFなど)→ 断熱材(繊維系等)→ 胴縁(任意)→ 石膏ボード → 仕上げ
屋根:屋根材 →(通気)→ 野地板 →(必要に応じシート・面材)→ 断熱材 → 気密層 → 室内仕上げ
※面材には透湿性の差があり、選択次第で乾きやすさが変わります。
室内が暖・湿、屋外が寒冷。
壁内で外気温に近い冷面に達すると露点を超え、結露が発生。
対策:室内側防湿気密シートで水蒸気を入れない/断熱強化で温度差緩和/透湿防水シート+通気層で屋外へ排湿。
屋外が高温多湿、室内は冷房で低温。
冷えた室内側寄りの層で露点到達 → 見えないところで結露。
条件はシンプル:
十分な水蒸気(高湿度)
大きな温度差(外30℃台・室内20℃台など)
ポリエチレンの防湿・気密シート(水蒸気ほぼ通さない)を屋根・壁の室内側に張り、かつ冷房強めのとき、シート裏で結露が発生しやすい。
セルロースファイバーなど調湿性の高い断熱材でも、恒常的な曇り・湿りは長期劣化の火種。
片流れ屋根などで屋根は厚く断熱(20cm以上推奨)/壁は薄いと、壁側での夏型結露リスクが上がる。
冬は防湿、夏は透湿に“可変”するシートを室内側の気密ラインに。
壁内の湿気を室内側へ還流させ、エアコンの除湿で処理できる流れをつくる。
例:タイベックスマート、ウルト(Würth)のウートップ など。
コスト差は一棟で数万円程度の上振れで、“保険”として有効。
可変シートの**室内側に空気層(胴縁)**をつくる/石膏ボードを二重貼り/薄い内側付加断熱で、表面温度の極端な低下を抑制。
屋根・壁ともに通気層の連続性を厳守(棟・軒・入隅・バルコニー取り合い要注意)。
目標は26〜28℃で除湿優先(全館空調と好相性)。
温度差を作りすぎない=露点到達を避ける、が基本。

透湿性の把握:面材・シートの透湿抵抗を仕様で確認。
施工時は厚み・欠損・気密ラインを写真・サーモ・ピン計測で可視化。
既存住宅は小屋裏点検で夏期の曇り・湿りをチェック。
野地板が乾く設計:棟換気+軒裏換気など通気計画を明確化。
断熱厚のバランス:屋根だけ厚い/壁が薄い、のアンバランスを避ける。
シート選定:屋根断熱の気密層に可変透湿気密シートを基本とし、ポリエチレン単独は避けるのが安全側。
室内側は可変透湿気密シートを採用
通気層は上下連続(壁・屋根とも)
直冷防止:胴縁で空気層/PB二重貼り等を検討
屋根断熱=20cm以上を目安に、壁との厚みバランスを確認
冷房は除湿優先で**26〜28℃**運用
面材・シートの透湿性を仕様書で確認
施工時の厚み・欠損・気密は記録提出を受け取る
既存住宅は小屋裏の夏季点検で曇り・湿りを確認

冬型結露は「入れない+乾かす」で対策可能。
夏型結露は見えないところで起きやすいため、
可変透湿気密シート、
直冷を避けるディテール、
冷やしすぎない空調、
を“セット”で実装するのが実務的解です。
高気密高断熱化が進む今こそ、壁と屋根の“乾き続ける設計”が住宅寿命を左右します。