熊本で地震が発生しました。
被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。
地震のニュースを見ると、
「私たちの地域は大丈夫かな」
「今の家で大きな地震が起きたら、どうなるのだろう」
と、不安になる方も多いと思います。

日本で暮らしている以上、地震を完全に避けることはできません。
これまで大きな地震が少なかった地域でも、突然、強い揺れに襲われる可能性があります。
ただし、必要以上に怖がる必要はありません。
大切なのは、地震について正しく知り、家を建てるときにできる備えをしておくことです。
今回お伝えしたいのは、家族の命を守るだけでなく、地震のあとも暮らしを続けられる家についてです。
そのために、私たちが大切にしているのが、
「許容応力度計算による耐震等級3」
という家づくりです。
少し難しい言葉ですが、順番に分かりやすく説明します。
家族4人が暮らす、ある家庭を想像してみてください。
大きな地震が起きました。
幸い、家は倒れず、家族にもけがはありませんでした。
お母さんは、ほっとして子どもたちに声をかけます。
「みんな無事で、本当によかった」
ところが、家の中を見ると、壁には大きなひびが入り、柱も少し傾いています。
専門家に確認してもらうと、
「余震でさらに壊れる危険があります。しばらく家には入らないでください」
と言われました。
家族の命は助かりました。
しかし、その日から避難所での生活が始まります。

着替えも十分にありません。
子どもの勉強道具も家の中です。
仕事に必要な物も取り出せません。
いつ家に戻れるのかも分かりません。
さらに、家の修理に大きなお金がかかることが分かりました。
住宅ローンを払いながら、仮住まいの家賃も必要になります。
このように、家が倒れなかったとしても、その後に住めなくなってしまうことがあります。
だからこそ、家づくりでは、
「地震で倒れないか」だけでなく、
「地震のあとも、その家で暮らせるか」
まで考えることが大切なのです。
家の役割は、地震が起きている数十秒間だけ家族を守ることではありません。
地震のあとも、
「今日の夕飯はどうしよう」
「明日、子どもを学校へ送り出せるだろうか」
「仕事に行く準備ができるだろうか」
「夜、家族で安心して眠れるだろうか」
という毎日の生活を支える場所です。
もし地震のあとも家で暮らせれば、食事を作ることができます。
お風呂やトイレが使える可能性もあります。
子どもたちも、慣れた場所で眠ることができます。
災害によって不安な気持ちになっているとき、いつもの家で家族と過ごせることは、大きな安心につながります。
そのため、これからの家には、単に「倒れない」というだけでなく、被害をできるだけ小さくすることが求められます。
家の地震に対する強さを示す目安として、「耐震等級」があります。
耐震等級は、1から3までの3段階です。
耐震等級1は、建築基準法で求められている最低限の水準です。
耐震等級2は、等級1の1.25倍、耐震等級3は、等級1の1.5倍の地震力に耐えられることを目安に設計されます。
分かりやすく、雨に置き換えて考えてみましょう。
普通の雨をしのぐための傘と、強い風雨にも耐えやすい丈夫な傘では、つくりが違います。

どちらも「傘」ですが、強い雨や風が来たときの安心感は同じではありません。
家も同じです。
法律を守って建てられた家だからといって、大地震のあとも無傷で住み続けられるとは限りません。
建築基準法は、非常に大切な基準です。
しかし、主な目的は、大きな地震が起きたときに建物がすぐに倒壊し、人の命が失われる危険を減らすことです。
地震のあとに修理が必要になることや、住めなくなることまで、すべて防いでくれる基準ではありません。
2016年の熊本地震では、短い期間に震度7の揺れが2度観測されました。
最初の大きな揺れに耐えた家が、その後のさらに大きな揺れで倒壊する被害も起きました。
家を段ボール箱にたとえてみましょう。
新しい段ボール箱は、上から力をかけても、ある程度は耐えられます。
しかし、一度強く押しつぶして形がゆがんだ箱はどうでしょうか。
見た目には元の形に戻ったように見えても、最初より弱くなっています。

そこへ、もう一度大きな力がかかれば、今度は一気につぶれてしまうかもしれません。
家も、一度大きく揺さぶられると、柱や壁、接合部分などに傷みが残ることがあります。
その状態で大きな余震が起きれば、被害が急に大きくなる可能性があります。
熊本地震では、耐震等級3で適切に設計・施工された住宅の多くが、比較的被害を小さく抑えたことが報告されています。
もちろん、耐震等級3であれば絶対に無傷とは言い切れません。
地盤や建物の形、施工の状態、地震の大きさによって、被害は変わります。
それでも、家の強さを高めておくことは、被害を少なくし、地震のあとも暮らしを続けられる可能性を高めることにつながります。
住宅会社の広告で、
「耐震等級3相当の家です」
という言葉を見ることがあります。
ここで注意したいのが、「相当」という言葉です。
たとえば、お店で、
「国産牛と同じくらいおいしい牛肉です」
と言われたとします。
同じくらいと言われても、本当に国産牛なのか、誰がどのような基準で判断したのかは分かりません。

「耐震等級3相当」も、それと少し似ています。
住宅会社が独自の基準で「耐震等級3と同じくらいの強さがある」と説明している場合があり、正式な評価を受けていないこともあります。
そのため、
「耐震等級3ですか」
と聞くだけでは、十分でない場合があります。
ぜひ、
「正式な耐震等級3ですか」
「どの方法で安全性を確認していますか」
「許容応力度計算をしていますか」
と聞いてみてください。
「許容応力度計算」と聞くと、とても難しそうに感じます。
簡単に言えば、家のさまざまな部分にどのくらいの力がかかるのかを調べ、それぞれが安全に耐えられるかを数字で確かめる計算です。
人間ドックでは、見た目だけでは分からない体の状態を、血液検査やレントゲンなどで調べます。
許容応力度計算も、家の健康診断のようなものです。

見た目が立派だから大丈夫、と判断するのではありません。
・柱や梁に無理な力がかからないか
・地震に耐える壁の配置が偏っていないか
・柱と梁をつなぐ金物は十分か
・床や屋根が地震の力に耐えられるか
・基礎に大きな負担が集中していないか
といったことを、一つずつ数字で確認します。
家の一部だけではなく、屋根から基礎までを一つの建物として考え、地震の力がどのように流れるのかを調べるのです。
同じ「耐震等級3」という言葉でも、どのような計算を行ったのかによって、確認している内容は異なります。
だからこそ、私たちは許容応力度計算による耐震等級3を大切にしています。
「地震保険に入っていれば、家が壊れても建て直せるのでは?」
と思う方もいるでしょう。
しかし、地震保険は、家を元どおりに建て直すための費用を、すべて支払ってくれる保険ではありません。

一般的に、地震保険の契約金額は、火災保険金額の30%から50%の範囲です。
たとえば、火災保険の建物保険金額が2,000万円なら、地震保険は600万円から1,000万円の範囲になります。
一方、家が大きな被害を受けると、
・壊れた家の解体費用
・家の修理や建て替え費用
・仮住まいの家賃
・引っ越し費用
・家具や家電の買い直し
・残っている住宅ローン
など、さまざまなお金が必要になります。
お母さんが家計簿を前にして、
「住宅ローンを払いながら、仮住まいの家賃まで払えるだろうか」
と悩む状況になるかもしれません。
地震保険は大切です。
ただし、保険だけに頼るのではなく、家そのものの被害を小さくできるようにしておくことも、家族の生活と財産を守る大切な備えです。
家づくりでは、どうしても目に見えるものに関心が集まります。
「対面キッチンにしたい」
「洗濯物を室内で干せる場所がほしい」
「収納を増やしたい」
「おしゃれな外観にしたい」
どれも、毎日の生活を快適にする大切な希望です。
しかし、それらを支えているのは、家の構造です。
お気に入りのキッチンも、広いリビングも、家が安全であってこそ安心して使えます。
これから家を建てる方には、住宅会社へ次のことを確認していただきたいと思います。
「耐震等級はいくつですか」
「“相当”ではなく、正式な等級ですか」
「許容応力度計算をしていますか」
「基礎まで含めて確認していますか」
「地盤の状態も調べていますか」
専門的な内容を、すべて自分で理解する必要はありません。
質問したときに、難しい言葉だけでごまかさず、分かりやすく説明してくれる会社かどうかを見ることも大切です。
大きな地震が、いつ、どこで起きるのかは分かりません。
それでも、私たちは家を建てる前に、強さを確認することができます。
家は、家族の命を守る場所です。
そして地震のあとも、家族が食事をし、眠り、学校や仕事へ向かい、少しずつ日常を取り戻す場所でもあります。
地震が起きたあと、避難所から自宅へ戻り、玄関の扉を開けて、
「ただいま」
「おかえり」
と言い合えること。
それは、決して当たり前ではありません。

これから家を建てる方には、ぜひ、
「許容応力度計算による耐震等級3ですか」
と尋ねてほしいと思います。
一度きりの大切な家づくりです。
今の法律で建てられるかどうかだけではなく、10年後、30年後も、家族が安心して暮らせるかどうかまで考えて選んでください。
その選択が、家族の命だけでなく、地震のあとの暮らしと、大切な財産を守ることにつながります。